当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

「私、(さわ)くんのこと好きになっちゃったんだ。響司(きょうじ)くん、沢くんと仲いいんでしょ。協力してくれないかな」

 その一言で、僕、当馬響司(とうまきょうじ)は告白する機会もないまま失恋した。

 高校に入学してひと月も()っていない、春の日のことだった。

 恋愛相談してきたのは、吉田葉月(よしだはづき)。四歳のときからの幼馴染だ。

 葉月は、僕が通う吉田音楽教室の先生の娘。

 人懐っこくて、誰に対しても丁寧に接するところに惹かれていた。
 
 このとき、『君のこと好きだから、協力できない』と勇気を出して言えたなら、未来は変わっただろうか。