そんなことを脳内で繰り広げていると、一件目のお店に到着した。
そこはガラス張りの小さなアクセサリーショップだった。白を基調とした明るい店内には、ピアスやネックレスが整然と並べられ、柔らかな照明を反射するたびにキラキラと光り輝いている。普段だったら絶対に入ったりしないお店だったが、綺麗なアクセサリーたちを前に仁の目も自然と輝いた。
「わぁ、すごい! ……これも、あれも! 全部綺麗だ!」
人気なお店なのか店内にはそこそこ人がいた。仁はその人たちの間を縫うように歩き回り、キラキラと輝くアクセサリーたちを見て楽しむ。こういったアクセサリーの類が綺麗なのは、外から眺めて知っていた。だけど、男の自分がつけてもアクセサリーたちが可哀想かと思って、中に入ってまで見ることはなかった。
「これとか、仁に似合いそうだよ」
「……え?」
だから、遥が差し出したピンキーリングを見て目を見開いた。遥は言葉を失っている仁の手を取ると、そっと小指に指輪をはめる。控えめな小さな宝石が一つだけついているその指輪が仁の指の上で綺麗に輝く。仁が指にはまった指輪と遥の顔を交互に見比べれば、遥は全てを受け止めるように優しく微笑んだ。
「ほら、やっぱりよく似合ってる」
「……お、男がこんなものつけたって…………」
キラキラと輝くものは大好きだ。宝石でも、景色でも、人でも。それらを好きだと自信を持って言えるし、そんな自分を少しだけ誇りに思ったりもしている。だけど、全員が仁の趣味を理解してくれるわけじゃないことも、理解していた。
綺麗なものを好きだと言えば、後ろ指を向ける人がいる。
美しい景色に目を奪われれば、バカにする人がいる。
わかっているからこそ、場をわきまえているつもりだった。わかっていたからこそ、手を伸ばしてはいけない領分があると自分に言い聞かせた。
自分の指にはまった指輪は、たしかに綺麗だった。だが、同時に思う。それをつけていいのは自分のようなモブじゃなくて——。
「でも、嫌いじゃないでしょ?」
ハッとして顔をあげる。雲の切れ間から太陽の光が差し込むように、遥の言葉は仁の心にスッと入ってきた。
「なんで……?」
「強いていうなら、仁の瞳が輝いていたからかな?」
「な、んだそれ。この間から、意味わかんない」
「いいんだよ、分からなくても。もちろん、僕の気持ちを受け入れてくれたら嬉しいけどね」
そう言いながら遥は仁の小指から指輪を外す。持って行かれた指輪を名残惜しそうに手を伸ばしかけて、グッと堪える。
これでいい、と自分に言い聞かせながらトボトボと店の外へ出る。
せっかく楽しく推し活をしていたのに、気持ちが落ち込んでしまった。これじゃだめだ、と思って遥のことを考えてから、ふとそばに遥がいないことに気がついた。
どこにいるんだろう、と辺りを見渡せば遥はお店で何かを買っているところだった。妹さんへのプレゼントが決まったのか、と思っていると、遥は外にいる仁の方へと小走りで戻ってくる。
何を買ったんだ、と聞こうとしたが、急に手を握られて頭がショートする。そして、あっと思った時には、それが手の中へと渡されていた。
遥が、仁の手の中に小さな袋を置いた時、仁は不覚にも泣きそうになった。
彼が手渡してくれたのは、遥が仁に似合うと言ってくれた指輪だった。
いつの間に買ったんだよ、とか、俺なんかより妹さんのプレゼントはいいのか、とか。言いたいことはたくさんあったのに、胸が詰まって言葉が出てこない。代わりに、絶対に大事にしようという気持ちを込めて、小さな袋をぎゅっと握りしめた。仁の反応を見ていた遥はホッと安心したように胸を撫で下ろし、優しく微笑んでいた。
その笑みはいつものファンサとは違うものだった。
また、仁は自分の知らない遥を知ることになる。
そこはガラス張りの小さなアクセサリーショップだった。白を基調とした明るい店内には、ピアスやネックレスが整然と並べられ、柔らかな照明を反射するたびにキラキラと光り輝いている。普段だったら絶対に入ったりしないお店だったが、綺麗なアクセサリーたちを前に仁の目も自然と輝いた。
「わぁ、すごい! ……これも、あれも! 全部綺麗だ!」
人気なお店なのか店内にはそこそこ人がいた。仁はその人たちの間を縫うように歩き回り、キラキラと輝くアクセサリーたちを見て楽しむ。こういったアクセサリーの類が綺麗なのは、外から眺めて知っていた。だけど、男の自分がつけてもアクセサリーたちが可哀想かと思って、中に入ってまで見ることはなかった。
「これとか、仁に似合いそうだよ」
「……え?」
だから、遥が差し出したピンキーリングを見て目を見開いた。遥は言葉を失っている仁の手を取ると、そっと小指に指輪をはめる。控えめな小さな宝石が一つだけついているその指輪が仁の指の上で綺麗に輝く。仁が指にはまった指輪と遥の顔を交互に見比べれば、遥は全てを受け止めるように優しく微笑んだ。
「ほら、やっぱりよく似合ってる」
「……お、男がこんなものつけたって…………」
キラキラと輝くものは大好きだ。宝石でも、景色でも、人でも。それらを好きだと自信を持って言えるし、そんな自分を少しだけ誇りに思ったりもしている。だけど、全員が仁の趣味を理解してくれるわけじゃないことも、理解していた。
綺麗なものを好きだと言えば、後ろ指を向ける人がいる。
美しい景色に目を奪われれば、バカにする人がいる。
わかっているからこそ、場をわきまえているつもりだった。わかっていたからこそ、手を伸ばしてはいけない領分があると自分に言い聞かせた。
自分の指にはまった指輪は、たしかに綺麗だった。だが、同時に思う。それをつけていいのは自分のようなモブじゃなくて——。
「でも、嫌いじゃないでしょ?」
ハッとして顔をあげる。雲の切れ間から太陽の光が差し込むように、遥の言葉は仁の心にスッと入ってきた。
「なんで……?」
「強いていうなら、仁の瞳が輝いていたからかな?」
「な、んだそれ。この間から、意味わかんない」
「いいんだよ、分からなくても。もちろん、僕の気持ちを受け入れてくれたら嬉しいけどね」
そう言いながら遥は仁の小指から指輪を外す。持って行かれた指輪を名残惜しそうに手を伸ばしかけて、グッと堪える。
これでいい、と自分に言い聞かせながらトボトボと店の外へ出る。
せっかく楽しく推し活をしていたのに、気持ちが落ち込んでしまった。これじゃだめだ、と思って遥のことを考えてから、ふとそばに遥がいないことに気がついた。
どこにいるんだろう、と辺りを見渡せば遥はお店で何かを買っているところだった。妹さんへのプレゼントが決まったのか、と思っていると、遥は外にいる仁の方へと小走りで戻ってくる。
何を買ったんだ、と聞こうとしたが、急に手を握られて頭がショートする。そして、あっと思った時には、それが手の中へと渡されていた。
遥が、仁の手の中に小さな袋を置いた時、仁は不覚にも泣きそうになった。
彼が手渡してくれたのは、遥が仁に似合うと言ってくれた指輪だった。
いつの間に買ったんだよ、とか、俺なんかより妹さんのプレゼントはいいのか、とか。言いたいことはたくさんあったのに、胸が詰まって言葉が出てこない。代わりに、絶対に大事にしようという気持ちを込めて、小さな袋をぎゅっと握りしめた。仁の反応を見ていた遥はホッと安心したように胸を撫で下ろし、優しく微笑んでいた。
その笑みはいつものファンサとは違うものだった。
また、仁は自分の知らない遥を知ることになる。



