(どうして……)

 摑まれた腕を伝って、チリチリとした痺れがうなじを刺激し、理性が警告する。

──逃げろ。

 頭では分かっている。分かっている……のに、体が動かない。

「……お前……番がいるのか?」

 震えていた、声が。腕を摑む力がグッと強まる。うなじを見つめる瞳は、揺れていた。

「……離せ」

 零れ落ちた言葉は、あまりも弱々しかった。言葉とは裏腹に、振り払えない。

「どうして……拒絶反応が出ない?」

(そんなこと、俺が一番知りたい)

──運命の番。

 そんな都市伝説じみた言葉を、不意に思い出した。すべてを覆す──理性を越え、本能と本能が惹かれ合う番。

「……──っ」

 目が合った瞬間、背中に今まで感じたことのない甘い痺れが走った。視界が霞み、呼吸が荒くなる。理屈じゃない、俺の本能が訴えていた。

──このアルファを逃がすな。

 腕を引かれれば、抵抗することなんてできなかった。理性はもう、どこかに飛んでいた。