つぶらな瞳の子犬は、大型犬になって10年分の愛を捧ぐ。

 その瞬間――ここだけが世界から切り取られたような気がした。あんなに花火が打ち上がっているのに、まったく音が聞こえない。周りにほかの見物客もいるのに、まったく目に入らない……――

「……へ」

 口からこぼれ出たのは、あまりにも間抜けな声。脳内の処理が追いつかない。


──俺のお嫁さんになって?


 数十秒前の言葉が、リフレインする。目の前の大型犬は、相変わらず真顔のまま──真一文字に結ばれた唇は、心なしか震えていた。

 脳がフリーズした――その数秒後、花火の音と周りの喧騒がワッと耳になだれ込んできた。

 優斗はジッと、俺の言葉を待っている。
 ドクドクと鼓動が早鐘を打つなか、辛うじて出てきた言葉といえば――

「……俺が嫁なの?」