つぶらな瞳の子犬は、大型犬になって10年分の愛を捧ぐ。

 優斗は物心つく頃から一緒に過ごしてきた、俗にいうところの幼馴染みだ。俺の後ろをチョコチョコとついて回る、それはそれは可愛らしい少年だった。
 しかし、別れは突然訪れた。優斗が6歳のとき、父親の単身赴任が決まり、一緒についていくことになったのだ。わんわん泣いて、しがみつかれたのは良い思い出だ。それほどまでに、俺は優斗に懐かれていた。

 大学進学を機に、俺は地元を離れた。入れ違うように優斗一家が戻ってきたことを聞いたのは、しばらく経ってからのことだった。
 それからは、怒濤のすれ違いが続いた。俺が帰省したタイミングで部活の合宿に行っていたり、校外学習に行っていたり──とにかく間が悪かった。
 そして大学4年の今年──10年ぶりの再会とあいなった。可愛かった子犬は、すっかり大型犬にグレードアップしていたが。

「……成長しすぎだろ、くそっ……」

 ゴロリとベッドに寝転びながら、昼間会った優斗の姿を思い出す。あの頃の小さな《まーくん》ではない──立派な男だった。眉尻を下げた、少しはにかんだ笑顔が脳内で再生され、キュッと胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。

「……まあ、10年だもんな」

 ウズウズと胸の中に纏わり付く正体不明の感情に気付かぬフリをして、明日の花火大会に想いを馳せながらソッと目を閉じた。