恋をするなら腐れ縁

 ピコン!

 メッセージアプリの通知音に、まどろむ意識が引き戻される。
 ある日の休日は、カーテンの隙間から覗く日差しが心地よい、昼下がりのことだった。
 こんな時間に一体誰だろうかと思いつつ、いやいや今はまだ昼間の筈だと脳内で突っ込んでから、重い瞼を持ち上げ、すっかり根の張った身体を起こした。
 そうして覗き込んだ、机上に置いた開きっぱなしにしていたノートパソコンの画面には、よくよく見知った、しかして久方ぶりに見る名前が表示されていた。

「ん……(こずえ)?」

 瞼を擦りながら開いたメッセージの内容は、

『ヤケ酒』

 と、シンプルな三文字だけが綴られた短いもの。しかし、

「あー……」

 そういうことか、と俺は事態を飲み込んだ。
 メッセージを送って来た相手、幼馴染で腐れ縁の木埜下梢は、折に触れて自分のことを呼び出す。中でもこの『ヤケ酒』の文言だけで送って来る時は、文字通りの内容ではあるのだが、徹夜だろうか梯子だろうかと、それなりの覚悟をこちらも決めなければならない。
 とは言え、

『いつでも』

 俺の方も別段、それが嫌な訳でもなくて。
 何を思うでもなくそれだけ短く返して、あとは向こうから仔細が届くのを待つのだった。

「ふわぁ、ぁ……」

 大きく伸びをして、一気に覚醒を促しつつ、スマホを手に、前回のヤケ酒からどれくらいの期間が空いていただろかと遡る。

「んー……あぁ、10ヶ月も前だったっけか」

 口にして、そういえばと思う。
 今は十月で、前回呼び出されたのは、寒い寒い、大振りな雪の降る日だった。

「――さぁて、どっちかねぇ」

 今回の要件は、思い当たるものの内、どちらだろうか。
 或いは全く異なる、新しい内容での呼び出し、ということも、こと梢にいたっては有りそうなものではあるが、はたして――。