「王子先輩、私にも教えてくださいよー!」
「えー、ずるい! 私もここ教えて欲しいです!」
今日も朝陽先輩の周囲には女子生徒たちが取り囲んでいた。
あれから朝陽先輩は僕以外に教えている姿をよく見かけるようになった。
僕ばかり特別扱いしてもらうわけにはいかないけど、どこか寂しく感じる部分もある。
だけど、その分夜は練習する時間が少しだけ増えたんだけどね。
正直、僕の運動能力だと時間が足りないのが現状だ。
「直、途中のダンスは覚えたか?」
「完璧だよ!」
「なら踊ってみて」
僕は悠人に言われたようにその場で踊っていく。
昨日、朝陽先輩にしっかり教えてもらった場所だ。
「どう?」
踊り終わると悠人たちに詰め寄る。
だけど、悠人やバスケ部の友達たちはその場でクスクスと笑っていた。
「直が踊るとダンスって言うよりは、タコが踊っているみたいだな」
「むしろ操り人形に近くないか?」
「うんうん、流されているもんな」
必死に踊ったのにこの言いようだ。
だけど、ダンスを全て覚えたことは褒めてもらいたい。
覚えるのも大変だったからな。
ついついあの日のことを思い出して遠くを見つめる。
「ちゃんと覚えてただけでもすごいぞ!」
遠くにいた朝陽先輩が助け舟を出す。
「ほら、できてるって先輩も言ってるし!」
「くくく、あれはそういう意味ではないと思うよ」
「そうだぞー! 直はすぐ勘違いするー」
喜んでいた僕にバスケ部の友達たちは楽しそうに突いてくる。
やっぱり運動部の基準は運動音痴とはかけ離れているからね。
「なぁ、悠人なら僕の……悠人?」
悠人に声をかけると、なぜか険しい表情で朝陽先輩の方を見ていた。
「あぁ、直は頑張ってるな」
そう言って、悠人は僕の肩を持って向きを変えた。
「だけど、ペンギンからタコダンスになった程度だな」
「なんだと!?」
僕はその場で悠人の足を踏んで離れる。
タコダンスでも、ちゃんとダンスにはなっているからな。
「痛っ! お前、最近俺への扱いひどくないか?」
「悠人だからね」
いつものようなやり取りをしていると、周囲から視線を感じた。
ふと顔を上げると、何人かの女子生徒がこちらを見ていた。
正確には僕を見ているような気がする。
「……」
その表情に少しだけ背筋が寒くなる。
怒っているような、何か不満を抱えてそうな何とも言えない。
でも、はっきりとした理由が分からない。
「直」
隣にいた悠人が僕を引き寄せた。
「何?」
「気にするな」
悠人は小さな声で呟いた。
だけど、僕には何を言っているのか理解できなかった。
「何を?」
「……なんでもない」
悠人はそう言うといつものように笑った。
「ほら、続きのダンスは覚えたか? 体育祭で恥かきたくないだろ?」
「それはそうだけど……」
僕が振り返ると、女子生徒たちは朝陽先輩と楽しそうに話していた。
気のせいだったのかな。
でも、朝陽先輩の笑顔はどこか少しだけ疲れているようにも見えた。
応援団長ってやっぱり大変なんだろうな。
「悠人、さっき何か言おうとした?」
「別に」
「絶対何かあったでしょ」
「直は知らなくていい」
「なんだよそれ」
少しムッとすると、悠人は困ったように笑う。
「お前は今ダンス覚えることで精一杯だろ」
「まあ……」
「だから余計なこと考えるなよ」
いつもの軽い調子なのに、その声だけは少し真剣だった。
「わかったよ」
そう返事をすると、悠人はいつものように笑って僕の肩を軽く叩いた。
「よし、もう一回合わせるぞ! 体育祭まであと少しだからな」
「うん!」
もう一度列に戻る前に、自然と視界に朝陽先輩が入る。
女子生徒たちに囲まれながら笑っている姿は、やっぱり学校中の人気者だった。
それなのに不意に朝陽先輩と目が合う。
その瞬間だけ、朝陽先輩は小さく笑って親指を立てた。
――頑張れ
そんなふうに言われた気がして、僕も思わず笑い返す。
体育祭まであと少し。
ダンスはまだ完璧じゃない。
それでも最初の頃よりは、ちゃんと踊れるようになってきた。
あとは本番まで練習あるのみ。
この時の僕は体育祭が楽しみで仕方なかった。
「えー、ずるい! 私もここ教えて欲しいです!」
今日も朝陽先輩の周囲には女子生徒たちが取り囲んでいた。
あれから朝陽先輩は僕以外に教えている姿をよく見かけるようになった。
僕ばかり特別扱いしてもらうわけにはいかないけど、どこか寂しく感じる部分もある。
だけど、その分夜は練習する時間が少しだけ増えたんだけどね。
正直、僕の運動能力だと時間が足りないのが現状だ。
「直、途中のダンスは覚えたか?」
「完璧だよ!」
「なら踊ってみて」
僕は悠人に言われたようにその場で踊っていく。
昨日、朝陽先輩にしっかり教えてもらった場所だ。
「どう?」
踊り終わると悠人たちに詰め寄る。
だけど、悠人やバスケ部の友達たちはその場でクスクスと笑っていた。
「直が踊るとダンスって言うよりは、タコが踊っているみたいだな」
「むしろ操り人形に近くないか?」
「うんうん、流されているもんな」
必死に踊ったのにこの言いようだ。
だけど、ダンスを全て覚えたことは褒めてもらいたい。
覚えるのも大変だったからな。
ついついあの日のことを思い出して遠くを見つめる。
「ちゃんと覚えてただけでもすごいぞ!」
遠くにいた朝陽先輩が助け舟を出す。
「ほら、できてるって先輩も言ってるし!」
「くくく、あれはそういう意味ではないと思うよ」
「そうだぞー! 直はすぐ勘違いするー」
喜んでいた僕にバスケ部の友達たちは楽しそうに突いてくる。
やっぱり運動部の基準は運動音痴とはかけ離れているからね。
「なぁ、悠人なら僕の……悠人?」
悠人に声をかけると、なぜか険しい表情で朝陽先輩の方を見ていた。
「あぁ、直は頑張ってるな」
そう言って、悠人は僕の肩を持って向きを変えた。
「だけど、ペンギンからタコダンスになった程度だな」
「なんだと!?」
僕はその場で悠人の足を踏んで離れる。
タコダンスでも、ちゃんとダンスにはなっているからな。
「痛っ! お前、最近俺への扱いひどくないか?」
「悠人だからね」
いつものようなやり取りをしていると、周囲から視線を感じた。
ふと顔を上げると、何人かの女子生徒がこちらを見ていた。
正確には僕を見ているような気がする。
「……」
その表情に少しだけ背筋が寒くなる。
怒っているような、何か不満を抱えてそうな何とも言えない。
でも、はっきりとした理由が分からない。
「直」
隣にいた悠人が僕を引き寄せた。
「何?」
「気にするな」
悠人は小さな声で呟いた。
だけど、僕には何を言っているのか理解できなかった。
「何を?」
「……なんでもない」
悠人はそう言うといつものように笑った。
「ほら、続きのダンスは覚えたか? 体育祭で恥かきたくないだろ?」
「それはそうだけど……」
僕が振り返ると、女子生徒たちは朝陽先輩と楽しそうに話していた。
気のせいだったのかな。
でも、朝陽先輩の笑顔はどこか少しだけ疲れているようにも見えた。
応援団長ってやっぱり大変なんだろうな。
「悠人、さっき何か言おうとした?」
「別に」
「絶対何かあったでしょ」
「直は知らなくていい」
「なんだよそれ」
少しムッとすると、悠人は困ったように笑う。
「お前は今ダンス覚えることで精一杯だろ」
「まあ……」
「だから余計なこと考えるなよ」
いつもの軽い調子なのに、その声だけは少し真剣だった。
「わかったよ」
そう返事をすると、悠人はいつものように笑って僕の肩を軽く叩いた。
「よし、もう一回合わせるぞ! 体育祭まであと少しだからな」
「うん!」
もう一度列に戻る前に、自然と視界に朝陽先輩が入る。
女子生徒たちに囲まれながら笑っている姿は、やっぱり学校中の人気者だった。
それなのに不意に朝陽先輩と目が合う。
その瞬間だけ、朝陽先輩は小さく笑って親指を立てた。
――頑張れ
そんなふうに言われた気がして、僕も思わず笑い返す。
体育祭まであと少し。
ダンスはまだ完璧じゃない。
それでも最初の頃よりは、ちゃんと踊れるようになってきた。
あとは本番まで練習あるのみ。
この時の僕は体育祭が楽しみで仕方なかった。



