午後にはたくさんの人が会場に集まってきた。
「王子様ー!」
「頑張ってー!」
我が校のバスケ部は強豪校とは聞いていたけど、すでに応援する声が響いていた。
それもまだ試合が始まる前だ。
どうやら試合の前にウォーミングアップの時間があるのか、シュート練習や軽いパスをしている。
もちろん朝陽先輩がボールを持つたび、大きな歓声が湧き上がる。
「あっ、悠人も出てる」
レギュラーになったのか、悠人も軽くコートを走ったり、シュートをして体育館やボールの感触を確かめていた。
「二人ともすごいな……」
そんな二人を僕は眺めていた。
ウォーミングアップを終えたバスケ部員はベンチまで歩いていく。
一瞬、目が合うと朝陽先輩は小さく微笑んだ。
「きゃあああああああ!」
「今こっち見て笑ったわよね?」
「王子様が初めてファンサしてくれたわよー!」
僕の目の前にいる女子生徒たちが盛り上がっていた。
しっかりファンサービスもできる朝陽先輩ってすごいね。
いつも僕の手からご飯を食べている食いしん坊の朝陽先輩はここにはいないようだ。
――ブー!
しばらくすると、会場内にブザーが鳴る。
「次の試合は青葉高校と港南高校の試合です。両選手はコートへお集まりください」
アナウンスが響くと、両チームがベンチから立ち上がる。
「ねぇ、この試合の相手高校って……」
「昨年の因縁の相手ね」
「同じ市に他の全国常連校があるのはどうにかならないのかな……」
「王子様、大丈夫かしら……」
朝陽先輩を応援しにきている人たちも心配そうに見ていた。
スマートフォンで調べると、昨年は我が校が全国大会に出場して、その前は港南高校が全国大会に出場していた。
同じ県内で強い高校は三校あり、僕が通う青葉高校と同じ市内にある港南高校。
そして、市外の星稜高校が主に全国大会に行っているようだ。
「がんばれ……」
そんな話を聞いていたら、僕も不安になってきた。
僕は手を合わせて必死に応援する。
さっきまでウォーミングアップで何本もシュートを打っていた朝陽先輩も、今は真剣な表情で仲間たちと円陣を組んでいた。
「一本ずつ正確に。俺たちの試合はここからだ」
「「「「おう!」」」」
五人の拳が合わさり、一斉にコートへ散る。
審判がセンターサークルへ歩き、ボールを胸の前で構えた。
会場が静まり返る。
――ピーッ!
鋭いホイッスルと同時に、ボールが真上へ放り上げられた。
両チームのセンターが勢いよく跳び上がり、空中ではじかれたボールが味方へ渡る。
「ナイス!」
歓声が一気に大きくなる。
ボールはガードへと渡り、リズムよくドリブルをつきながら相手コートへ運ばれていく。
試合開始からわずか数秒。
朝陽先輩は軽やかなステップでコートを駆け抜け、スリーポイントラインの外で静かにパスを待っていた。
ボールが朝陽先輩の手に渡る。
ディフェンスとのわずかな間合いを作ると、迷いなく跳び上がった。
高く伸びた両腕から放たれたボールは、美しい弧を描いてリングへ向かう。
一瞬だけ、体育館の時間が止まったような気がした。
――シュッ
ネットだけを揺らし、ボールがリングをすり抜ける。
「ナイスシュート!」
ベンチから歓声が上がり、朝陽先輩はすぐに表情を切り替えて自陣へ駆け出した。
初得点は朝陽先輩が放ったシュートだった。
「きゃああああああ!」
「王子様ー!」
女子生徒たちの歓声がさらに大きくなる。
真後ろにいる僕はついビクッとしてしまうほど大きな声だ。
その後も朝陽先輩がシュートを決めるたびに応援席から大きな歓声が上がる。
ディフェンスをかわして放つスリーポイント。
味方への鮮やかなアシスト。
ルーズボールに飛び込む姿。
いつも見ている朝陽先輩とは全く別人だ。
みんなから王子様と呼ばれている理由がやっとわかった気がする。
男の僕から見ても、ついかっこいいと声が漏れるほどだからね。
シューズが床を鳴らす音も、ボールを弾く音も、選手たちの掛け声も、すべてが胸に響いてきた。
気づけば試合は終盤へ差しかかり、会場の熱気は最高潮に達していた。
「朝陽、いけー!」
そんな中、朝陽先輩はボールを受け取った。
試合終了まで残り数秒。
相手ディフェンスをかわし、迷いなく放ったスリーポイント。
――シュッ!
ネットを揺らした瞬間、試合を決定づける歓声が体育館いっぱいに広がった。
そして、終了のブザーが鳴り響く。
その場で喜び合う朝陽先輩たち。
その一方、悔しさで目には涙を溜めている港南高校の生徒たちがいた。
両校の選手たちが整列し、「ありがとうございました!」と一礼する。
勝った喜びに沸く選手たちの中で、朝陽先輩は汗を拭いながら観客席へ顔を向けた。
その視線が、一瞬だけ僕と重なった。
朝陽先輩は僕の方を見ると、小さく拳を握って突き出した。
「きゃー!」
「今こっち見た!」
「目が合った!」
応援席は一気に沸き立つ。
みんな自分に向けられたものだと思っているみたいだ。
さすが王子様だな。
試合が終わっても、応援してくれたみんなへの気遣いを忘れていない。
そんな朝陽先輩を拍手で送る。
だけど、朝陽先輩は一瞬だけ首を傾げると、少しだけ残念そうな表情を浮かべていた気がした。
「王子様ー!」
「頑張ってー!」
我が校のバスケ部は強豪校とは聞いていたけど、すでに応援する声が響いていた。
それもまだ試合が始まる前だ。
どうやら試合の前にウォーミングアップの時間があるのか、シュート練習や軽いパスをしている。
もちろん朝陽先輩がボールを持つたび、大きな歓声が湧き上がる。
「あっ、悠人も出てる」
レギュラーになったのか、悠人も軽くコートを走ったり、シュートをして体育館やボールの感触を確かめていた。
「二人ともすごいな……」
そんな二人を僕は眺めていた。
ウォーミングアップを終えたバスケ部員はベンチまで歩いていく。
一瞬、目が合うと朝陽先輩は小さく微笑んだ。
「きゃあああああああ!」
「今こっち見て笑ったわよね?」
「王子様が初めてファンサしてくれたわよー!」
僕の目の前にいる女子生徒たちが盛り上がっていた。
しっかりファンサービスもできる朝陽先輩ってすごいね。
いつも僕の手からご飯を食べている食いしん坊の朝陽先輩はここにはいないようだ。
――ブー!
しばらくすると、会場内にブザーが鳴る。
「次の試合は青葉高校と港南高校の試合です。両選手はコートへお集まりください」
アナウンスが響くと、両チームがベンチから立ち上がる。
「ねぇ、この試合の相手高校って……」
「昨年の因縁の相手ね」
「同じ市に他の全国常連校があるのはどうにかならないのかな……」
「王子様、大丈夫かしら……」
朝陽先輩を応援しにきている人たちも心配そうに見ていた。
スマートフォンで調べると、昨年は我が校が全国大会に出場して、その前は港南高校が全国大会に出場していた。
同じ県内で強い高校は三校あり、僕が通う青葉高校と同じ市内にある港南高校。
そして、市外の星稜高校が主に全国大会に行っているようだ。
「がんばれ……」
そんな話を聞いていたら、僕も不安になってきた。
僕は手を合わせて必死に応援する。
さっきまでウォーミングアップで何本もシュートを打っていた朝陽先輩も、今は真剣な表情で仲間たちと円陣を組んでいた。
「一本ずつ正確に。俺たちの試合はここからだ」
「「「「おう!」」」」
五人の拳が合わさり、一斉にコートへ散る。
審判がセンターサークルへ歩き、ボールを胸の前で構えた。
会場が静まり返る。
――ピーッ!
鋭いホイッスルと同時に、ボールが真上へ放り上げられた。
両チームのセンターが勢いよく跳び上がり、空中ではじかれたボールが味方へ渡る。
「ナイス!」
歓声が一気に大きくなる。
ボールはガードへと渡り、リズムよくドリブルをつきながら相手コートへ運ばれていく。
試合開始からわずか数秒。
朝陽先輩は軽やかなステップでコートを駆け抜け、スリーポイントラインの外で静かにパスを待っていた。
ボールが朝陽先輩の手に渡る。
ディフェンスとのわずかな間合いを作ると、迷いなく跳び上がった。
高く伸びた両腕から放たれたボールは、美しい弧を描いてリングへ向かう。
一瞬だけ、体育館の時間が止まったような気がした。
――シュッ
ネットだけを揺らし、ボールがリングをすり抜ける。
「ナイスシュート!」
ベンチから歓声が上がり、朝陽先輩はすぐに表情を切り替えて自陣へ駆け出した。
初得点は朝陽先輩が放ったシュートだった。
「きゃああああああ!」
「王子様ー!」
女子生徒たちの歓声がさらに大きくなる。
真後ろにいる僕はついビクッとしてしまうほど大きな声だ。
その後も朝陽先輩がシュートを決めるたびに応援席から大きな歓声が上がる。
ディフェンスをかわして放つスリーポイント。
味方への鮮やかなアシスト。
ルーズボールに飛び込む姿。
いつも見ている朝陽先輩とは全く別人だ。
みんなから王子様と呼ばれている理由がやっとわかった気がする。
男の僕から見ても、ついかっこいいと声が漏れるほどだからね。
シューズが床を鳴らす音も、ボールを弾く音も、選手たちの掛け声も、すべてが胸に響いてきた。
気づけば試合は終盤へ差しかかり、会場の熱気は最高潮に達していた。
「朝陽、いけー!」
そんな中、朝陽先輩はボールを受け取った。
試合終了まで残り数秒。
相手ディフェンスをかわし、迷いなく放ったスリーポイント。
――シュッ!
ネットを揺らした瞬間、試合を決定づける歓声が体育館いっぱいに広がった。
そして、終了のブザーが鳴り響く。
その場で喜び合う朝陽先輩たち。
その一方、悔しさで目には涙を溜めている港南高校の生徒たちがいた。
両校の選手たちが整列し、「ありがとうございました!」と一礼する。
勝った喜びに沸く選手たちの中で、朝陽先輩は汗を拭いながら観客席へ顔を向けた。
その視線が、一瞬だけ僕と重なった。
朝陽先輩は僕の方を見ると、小さく拳を握って突き出した。
「きゃー!」
「今こっち見た!」
「目が合った!」
応援席は一気に沸き立つ。
みんな自分に向けられたものだと思っているみたいだ。
さすが王子様だな。
試合が終わっても、応援してくれたみんなへの気遣いを忘れていない。
そんな朝陽先輩を拍手で送る。
だけど、朝陽先輩は一瞬だけ首を傾げると、少しだけ残念そうな表情を浮かべていた気がした。



