「じゃあ、母さん先に帰るね」
「今日もありがとね!」
僕はお店の掃除を終えると、自転車に乗ってスーパーに向かう。
――ピロン♪
スマートフォンから音が鳴り、画面を見ると、王子朝陽と表示されていた。
『王子朝陽です。今日はお昼ありがとう!』
朝陽先輩から初めてのメッセージだった。
少しだけ返事を考えてから、ゆっくりと文字を打つ。
『こちらこそありがとうございました』
結局出てきたのはお礼の返事だけだった。
送信ボタンを押すと、すぐに既読がつく。
『明日のお弁当楽しみにしてるよ!』
その一文に思わず笑みがこぼれる。
相変わらず食いしん坊なのが、メッセージから伝わってくる。
『期待しすぎないでくださいね』
そう返すと、今度はスタンプが一つ送られてきた。
「くくく、唐揚げのスタンプなんてあるんだ……」
唐揚げに手足がついたスタンプに思わず笑ってしまった。
周囲から王子様と呼ばれている人が、まさか唐揚げのスタンプを送る人だとは、誰も思わないだろう。
昨日までお店でしか会わなかった人とこうして連絡を取り合っているのが不思議に思う。
『明日は唐揚げを入れますね!』
『うっし! 今から楽しみだな!』
今度は唐揚げが踊っているスタンプが返ってきた。
本当に王子様とかけ離れている。
僕はスーパーで明日のお弁当の材料を買い、家に帰っていく。
日頃と変わらない帰り道なのに、小さな変化が少しだけ新鮮に感じた。
――翌朝
いつもより少し早く目を覚ました僕は、台所へ向かう。
今日は朝陽先輩の分も作るつもりだ。
卵焼きを焼いて、唐揚げを揚げる。
昨日〝好き〟と言っていたおかずを思い出しながら、手際よく詰めていく。
「直、おはよ……って、そのお弁当箱どうしたの?」
起きてきた母さんが、僕の手元を見て目を丸くした。
まるで昨日に戻ったかのかと思うほど、同じことを言っている。
「あっ、今日は二人で食べることになったから」
「二人?」
「うん。朝陽先輩の分も一緒に入れようと思って」
母さんは一瞬だけきょとんとしたあと、ふっと笑う。
「朝陽先輩って夕方にコロッケをよく買っていく子よね?」
「母さん、知ってるの?」
「息子が楽しそうに話している姿はちゃんと見ているわよ」
母さんの言葉に僕は少し恥ずかしくなった。
「そんな話してたかな……」
朝陽先輩と話している僕はどこか楽しそうに見えるらしい。
そんなつもりはないのに、どこかで学校とは違う姿の朝陽先輩を見て楽しんでいたのだろう。
「男子高校生二人ならそのお弁当箱で正解ね」
重箱まではいかないが、大きめなお弁当箱におかずだけを入れて、僕の手よりも大きめなおにぎりいくつか作った。
「やっぱり大きい方がいいもんね」
「詰める方も楽だし、取り分けもしやすいもんね」
言われてみればその通りだ。
いつものお弁当箱を二つ用意するより、一つにまとめた方が作りやすかった。
でも、お弁当の半分以上か唐揚げと卵焼きで埋まっている。
好きだからっていくら何でも入れすぎかな……?
「これで完成!」
蓋を閉めると、ずっしりとした重みが手に伝わってくる。
「美味しいって言ってくれるといいわね」
「食いしん坊だからきっと大丈夫だよ」
朝陽先輩なら多少失敗しても、笑って食べてくれそう。
「これ母さんの……って時間大丈夫!?」
「あっ、急がなきゃ!」
母さんはどこか嬉しそうに微笑みながら、急いでお弁当を持って玄関に向かった。
「またお母さんにも朝陽くん紹介してね?」
「紹介? 別に――」
「だって、直から悠人くんの話しか聞かないんだもん!」
そういえば、友達の話って悠人のことしか話していなかった。
元からあまり友達が多い方でもなかったしね。
「母さん、それより時間!」
「わかってるわよ。直も気をつけてね!」
そう言って、母さんは店に向かった。
「そろそろ準備しないとね」
僕も大きなお弁当箱をリュックに入れると、ずっしりとしていた。
少し重たくなったリュックを背負い、学校へ向かうが、不思議と足取りは軽かった。
「今日もありがとね!」
僕はお店の掃除を終えると、自転車に乗ってスーパーに向かう。
――ピロン♪
スマートフォンから音が鳴り、画面を見ると、王子朝陽と表示されていた。
『王子朝陽です。今日はお昼ありがとう!』
朝陽先輩から初めてのメッセージだった。
少しだけ返事を考えてから、ゆっくりと文字を打つ。
『こちらこそありがとうございました』
結局出てきたのはお礼の返事だけだった。
送信ボタンを押すと、すぐに既読がつく。
『明日のお弁当楽しみにしてるよ!』
その一文に思わず笑みがこぼれる。
相変わらず食いしん坊なのが、メッセージから伝わってくる。
『期待しすぎないでくださいね』
そう返すと、今度はスタンプが一つ送られてきた。
「くくく、唐揚げのスタンプなんてあるんだ……」
唐揚げに手足がついたスタンプに思わず笑ってしまった。
周囲から王子様と呼ばれている人が、まさか唐揚げのスタンプを送る人だとは、誰も思わないだろう。
昨日までお店でしか会わなかった人とこうして連絡を取り合っているのが不思議に思う。
『明日は唐揚げを入れますね!』
『うっし! 今から楽しみだな!』
今度は唐揚げが踊っているスタンプが返ってきた。
本当に王子様とかけ離れている。
僕はスーパーで明日のお弁当の材料を買い、家に帰っていく。
日頃と変わらない帰り道なのに、小さな変化が少しだけ新鮮に感じた。
――翌朝
いつもより少し早く目を覚ました僕は、台所へ向かう。
今日は朝陽先輩の分も作るつもりだ。
卵焼きを焼いて、唐揚げを揚げる。
昨日〝好き〟と言っていたおかずを思い出しながら、手際よく詰めていく。
「直、おはよ……って、そのお弁当箱どうしたの?」
起きてきた母さんが、僕の手元を見て目を丸くした。
まるで昨日に戻ったかのかと思うほど、同じことを言っている。
「あっ、今日は二人で食べることになったから」
「二人?」
「うん。朝陽先輩の分も一緒に入れようと思って」
母さんは一瞬だけきょとんとしたあと、ふっと笑う。
「朝陽先輩って夕方にコロッケをよく買っていく子よね?」
「母さん、知ってるの?」
「息子が楽しそうに話している姿はちゃんと見ているわよ」
母さんの言葉に僕は少し恥ずかしくなった。
「そんな話してたかな……」
朝陽先輩と話している僕はどこか楽しそうに見えるらしい。
そんなつもりはないのに、どこかで学校とは違う姿の朝陽先輩を見て楽しんでいたのだろう。
「男子高校生二人ならそのお弁当箱で正解ね」
重箱まではいかないが、大きめなお弁当箱におかずだけを入れて、僕の手よりも大きめなおにぎりいくつか作った。
「やっぱり大きい方がいいもんね」
「詰める方も楽だし、取り分けもしやすいもんね」
言われてみればその通りだ。
いつものお弁当箱を二つ用意するより、一つにまとめた方が作りやすかった。
でも、お弁当の半分以上か唐揚げと卵焼きで埋まっている。
好きだからっていくら何でも入れすぎかな……?
「これで完成!」
蓋を閉めると、ずっしりとした重みが手に伝わってくる。
「美味しいって言ってくれるといいわね」
「食いしん坊だからきっと大丈夫だよ」
朝陽先輩なら多少失敗しても、笑って食べてくれそう。
「これ母さんの……って時間大丈夫!?」
「あっ、急がなきゃ!」
母さんはどこか嬉しそうに微笑みながら、急いでお弁当を持って玄関に向かった。
「またお母さんにも朝陽くん紹介してね?」
「紹介? 別に――」
「だって、直から悠人くんの話しか聞かないんだもん!」
そういえば、友達の話って悠人のことしか話していなかった。
元からあまり友達が多い方でもなかったしね。
「母さん、それより時間!」
「わかってるわよ。直も気をつけてね!」
そう言って、母さんは店に向かった。
「そろそろ準備しないとね」
僕も大きなお弁当箱をリュックに入れると、ずっしりとしていた。
少し重たくなったリュックを背負い、学校へ向かうが、不思議と足取りは軽かった。



