【調査記録紙片・小立野優弥】
小立野優弥は幼い頃から独特の感性を持ち合わせるとともに、非常にのんびりとした性格だった。好奇心が強く、何にでも興味を持ち、散歩に赴けばすぐ立ち止まるような少年だった。
両親は二年前に離婚しており、現在は母親との二人暮らし。父親は家庭内暴力を日常的に振るっており、それが離婚の原因となった。
尤も、小立野優弥が幼い頃は父親も温和で、マイペースに動く小立野優弥を見守り、「優しい子になりなさい」と諭しながらの教育を施していた。
それが一変したのは、小立野優弥が父親の浮気を母親に伝えた時からだった。
小立野優弥の日記によると、当時母親は父親の浮気を疑い、心身ともに疲弊していた。小立野優弥はそんな母親の様子を気遣い、父親から何度も言われた「優しい子になりなさい」という言葉を胸に、父親のことを調べた。そして、塾からバスで帰っている途中、会社の受付をしている女性と歓楽街を歩いているところを目撃、母親に報告した。
本人に悪気はなかった。ただ母親の「今日も遅いけど、お父さん何してるんだろうね?」という心配に対し、答えをあげて安心させたいだけだった。しかし結果として、これを契機に両親の不仲は加速し、父親は腹いせに暴力を振るうようになり、遂に離婚となった。
小立野優弥はどこまでも不器用な性格だったらしく、離婚を自分の優しさが足りなかったからだと解釈した。これ以降、とにかく優しくあろうと不器用なりに友達や学校のクラスメイト、見ず知らずの赤の他人にまで悪気のない優しさを振り撒いていった。しかし、そのほとんどが空回りし、小立野優弥は孤立しがちになっていった。
小立野優弥はさらに自分を責めていた。自分に優しさが足りないから、父親も友達もみんな自分から離れていってしまうのだと。優しくなれば、また昔みたく楽しい毎日が戻ってくるはずだと。優しさという呪いは、少しずつ、けれど着実に、彼の心を蝕んでいったようだ。
以上が、日記からわかったことである。
小立野優弥はSNSをしていない。主な調査元となったのは彼の日記であり、本来なら日記の内容を載せたいところだが、先日改めて小立野宅に調査しに行ったところ、日記は黒く塗り潰され、細部まで破り捨てられていた。
なお、本文章を書いている現在、母親は行方不明となっている。
小立野優弥は幼い頃から独特の感性を持ち合わせるとともに、非常にのんびりとした性格だった。好奇心が強く、何にでも興味を持ち、散歩に赴けばすぐ立ち止まるような少年だった。
両親は二年前に離婚しており、現在は母親との二人暮らし。父親は家庭内暴力を日常的に振るっており、それが離婚の原因となった。
尤も、小立野優弥が幼い頃は父親も温和で、マイペースに動く小立野優弥を見守り、「優しい子になりなさい」と諭しながらの教育を施していた。
それが一変したのは、小立野優弥が父親の浮気を母親に伝えた時からだった。
小立野優弥の日記によると、当時母親は父親の浮気を疑い、心身ともに疲弊していた。小立野優弥はそんな母親の様子を気遣い、父親から何度も言われた「優しい子になりなさい」という言葉を胸に、父親のことを調べた。そして、塾からバスで帰っている途中、会社の受付をしている女性と歓楽街を歩いているところを目撃、母親に報告した。
本人に悪気はなかった。ただ母親の「今日も遅いけど、お父さん何してるんだろうね?」という心配に対し、答えをあげて安心させたいだけだった。しかし結果として、これを契機に両親の不仲は加速し、父親は腹いせに暴力を振るうようになり、遂に離婚となった。
小立野優弥はどこまでも不器用な性格だったらしく、離婚を自分の優しさが足りなかったからだと解釈した。これ以降、とにかく優しくあろうと不器用なりに友達や学校のクラスメイト、見ず知らずの赤の他人にまで悪気のない優しさを振り撒いていった。しかし、そのほとんどが空回りし、小立野優弥は孤立しがちになっていった。
小立野優弥はさらに自分を責めていた。自分に優しさが足りないから、父親も友達もみんな自分から離れていってしまうのだと。優しくなれば、また昔みたく楽しい毎日が戻ってくるはずだと。優しさという呪いは、少しずつ、けれど着実に、彼の心を蝕んでいったようだ。
以上が、日記からわかったことである。
小立野優弥はSNSをしていない。主な調査元となったのは彼の日記であり、本来なら日記の内容を載せたいところだが、先日改めて小立野宅に調査しに行ったところ、日記は黒く塗り潰され、細部まで破り捨てられていた。
なお、本文章を書いている現在、母親は行方不明となっている。



