**
最初は、意味が分からなかった。
一学期の終業式が終わって、家に帰ったら、お姉ちゃんが部屋で手首から血を流して倒れていた。
去年のお姉ちゃんの誕生日に、私がプレゼントしたお洋服を着て、お気に入りだって言ってたブレスレットを身に着けて、そのブレスレットを切り裂くように手首を刺していた。
私はすぐに救急車を呼んで、電話口の人の言う通り止血を試みた。お母さんたちにも電話してたら、救急隊の人が駆けつけてくれて、お姉ちゃんは病院に運ばれていった。
でも、お姉ちゃんは助からなかった。
出血性ショックで、お姉ちゃんは死んだ。
お姉ちゃんの部屋の机の中に、遺書があった。
そこには、お前たちの罪が全て書かれていた。
お姉ちゃんと、そこの凛堂瑠々花さんは親友だったんだよね?
そんな親友と、お姉ちゃんは、同じ人を好きになった。凛堂さんの幼馴染で、お姉ちゃんが通っていた俳優養成学校の同期生、三栖悠真さん。どんくさいお姉ちゃんの練習に粘り強く付き合ってくれたり、落ち込んでいる時には元気づけてくれる素敵な人だったみたい。
でもお姉ちゃんは優しかったし、俳優になりたいっていう夢があったから、恋は諦めた。凛堂さんを応援するって、本気で思ってた。だから、二人を近づけるためにいろいろ裏で動いたり、友達に頼んで二人を鉢合わせたり手助けをしてた。
それなのに、凛堂さんはなかなか勇気が出なくて、悠真さんに気持ちを伝えられなかったんだよね? ああ、それとも、お姉ちゃんが諦めたから安心し切ってたのかな? のんびり恋を楽しめばいいやって。
まあそこはなんでもいいんだけど、困ったことに、悠真さんはお姉ちゃんのことが好きになってたんだよね。
なんか、告白されたんだって。養成学校からの帰り道に。
もちろん、お姉ちゃんは断ったよ? 凛堂さんを裏切るわけには行かないし、俳優になるためには恋に現を抜かすわけにはいかなかったから。
でもね、悠真さんは諦めなかった。
何度も何度も、お姉ちゃんにアプローチをした。さすがのお姉ちゃんも心が揺らいでたみたいだけど、頑なに首を縦には振らなかった。
ただ、やっぱりお姉ちゃんも女子高生なんだよ。
演技が上手くいかなくて、学校の成績も落ちてきて、心が折れて挫折しかけてた時に、そっと寄り添ってくれた悠真さんに寄りかかってしまった。弱っている時にもう何度目かわからない告白をされて、思わず了承してしまった。
お姉ちゃんは、凛堂さんに伝えないと、謝らないとって思ってたけど、なかなか言えなかった。だってお姉ちゃんがした行為は、親友への裏切りだから。
そうして伝えられずにいる間に、凛堂さんは友達からお姉ちゃんと悠真さんが付き合ってることを教えられたんだよね。
そりゃあ、ショックだよね。裏切られて憎らしいし、言ってくれなかったことが悲しいし、とにかく心がぐちゃぐちゃだったんだよね。
だから、凛堂さんは友達の黒瀬さんに相談した。
黒瀬さんはきっと、自分の過去の過ちに重ねたんだよね? 草間王治って人との恋愛にさ。
他人の恋愛を横取りするのは悪いこと。けれど、横取りのような形になってしまった自分がお姉ちゃんに言いに行く勇気はない。だから、気が強くて誰にでも物怖じしない久瀬明梨さんに相談した。
もしかしたら、知らなかったのかもだけど、久瀬明梨さんは自分が嫌いな人に責める口実があると、とことん責めるような性悪なんだよ。取り巻きの宇川ららさんや羽山華奈さんと一緒に、嫌がらせをお姉ちゃんへするようになった。
お姉ちゃんはしばらく耐えていた。物を隠されたり、クラスメイトに無視されたり、俳優としてのアカウントに誹謗中傷がたくさん書き込まれたりした。それでも、お姉ちゃんは必死に耐えた。
でもある日ね、この嫌がらせにはもしかしたら自分の裏切り行為が絡んでいるのかもしれないって、これはずっと言えなかった自分の過ちを謝るチャンスだって思い立ったんだって。
なんとなく疎遠になっていた凛堂さんに、お姉ちゃんが相談しに行ったことがなかった? あったよね?
でも凛堂さんは、知らないふりをした。わかっていながら、嘘をついた。
しかもその時に、わざとらしくあなたは、自分とお姉ちゃんはこれからも一番の親友だよって、うそぶいたんだよね?
そんなこと言われたら、言えなくなるよね。
お姉ちゃんは罪悪感と後悔に苛まれながらも、日に日にエスカレートしていく嫌がらせに耐え続けた。
私やお母さん、お父さんにも隠し通してた。普通に養成学校から「ただいま」って帰ってきて、「いただきます」って一緒にご飯を食べて、「おやすみ」って寝る時には手を振って、朝に顔を合わせた時には「おはよう」って笑いかけてくれて、嫌な学校に行くのに弱音ひとつ吐かずに「いってきます」って笑顔を、浮かべてたんだよ……?
家族が知らないんだから、当然恋人である悠真さんにも言ってなかったみたい。
けれど、お姉ちゃんの演技を誰よりも傍で見てきたのは悠真さん。彼の目は、長くは誤魔化せなかった。お姉ちゃんの様子が変なことに気づいて、慰めてくれたんだって。ほんと、優しいよね。
これは私が調べたことだけど、悠真さん、凄いんだよ。なんか、あちこちにいじめの原因をそれとなく聞いて回って、凛堂さんの気持ちのことを突き止めたんだって。
悠真さん、凛堂さんのところに来たんでしょ? いじめの理由とか聞かれて、いじめを止めるように言われたんじゃないの?
まあ、それはどうでもいい。
一番問題なのは、そこであなたが……お前が、いきなり悠真さんにキスをしたことだよ。
最後のわがままだとかなんとか理由をつけて、フッてもらうためだか知らないけど告白までしたんだって?
キモいよ、正直。性悪にも程があるでしょ。
そしてそれを久瀬明梨にこっそり撮影させて、AIを使って悠真さんが告白を受け入れてる偽りの続きまで作らせて、お姉ちゃんに見させたんだって?
最低。
ほんとに最低!
久瀬明梨は、お姉ちゃんに偽動画を見せた後に、いじめの理由を全て話した。そして、どんな気持ちだったのか思い知れと、正義感を振りかざして罵った。
お姉ちゃん、どんな気持ちだったかわかる?
夢も学校も上手くいかないし、いじめのせいで全然寝られてなくて精神を擦り減らして、正常な判断ができなくて悠真さんに裏切られたって思い込んで傷ついて、でも親友を先に裏切って友情をぶち壊したのは自分だってまた責めて、何もかもに絶望したお姉ちゃんの気持ち、お前にわかる? 追い込まれて自殺をしたのに、お前らが自分を責めてほしくないからって転校だと偽ってほしいって書いたお姉ちゃんの気持ちが、わかるかって聞いてんだよ!
……もうね、お姉ちゃんは自分に何も残ってないって思ったんだって。
私がいたのに。
私に言ってくれたら、真実を突き止めたのに。
お姉ちゃんは誰にも相談することなく、お前と一緒に買ったお気に入りのブレスレットとともに命を絶った。
これは、その復讐。
お姉ちゃんを死に追い込んだ人はみんな死ねばいい。
少しでも関係がある人は、みんな同罪だ。
クラスメイトだった人も、同じ部活だった人も、いじめを知っていて見て見ぬふりをした人も、SNSにあれこれ書き込んだ人も、みんなみんな同罪だ!
……もちろん、私だってそう。
お姉ちゃんの傍にいたのに、気付けなかった。
誰だよ、お姉ちゃんを大根役者だなんてバカにしたヤツは。
身内が、わからなかったんだよ?
美来お姉ちゃんは、私の自慢のお姉ちゃんなの。大好きなの。だからこそ、どうしても赦せないの!
復讐のためなら、悪魔に魂だって売ってやる。
だから私は、裏路地で接触してきた怪しい人の言い分に乗った。
デスゲームの企画案を書いて、開催したい理由も書いて、申し込んだ。
そして、通った。
どうだった? 多数派に責められるデスゲームは。
楽しんでくれた?
**
未蘭が語っていく真実に、唯奈も瑠々花も言葉を失っていた。
特に瑠々花は顔一面を涙と鼻水で濡らし、嗚咽をあげて慟哭していた。
「泣きたいのはこっちだよ! この人でなし!」
未蘭が感情的に罵る。すると、触発されたように瑠々花が叫んだ。
「違う! あたしだって傷ついてた! 迷ってた! なんとかして久瀬さんのいじめを止めないとって思ってた! でも、怖かった。勇気が出なかった。事が大きくなりすぎてて、どうしたらいいかわからなかった……。だからあたしは、あたしは……っ!」
「だからって、なんでもしていいわけないでしょ! 最後の偽動画なんて、あそこまでやる必要なかったでしょ!」
「違うの! あれは明梨が勝手にしたこと! あんなことしてなんて頼んでない! 唯奈と一緒に文句だって言いに行った! ほんとなのっ!」
「誰が信じるか! お前みたいな嘘つきの言うことなんて!」
「違う! 信じて! あたしは、本当に美来のことを親友だと思ってたの! だから悠真と付き合ったことを隠されて傷ついたし、悲しかったし、やり返したかったの!
……でも、傷つけたいなんて、思ってなかった……。ただあたしの黒くて最悪な気持ちを落ち着けたかっただけなの……。
美来を、死なせてしまうなんて……思ってなかったのーーっ!
あああああああ…………っ!」
瑠々花がその場に泣き崩れた。
何度も美来の名前を呼んでいた。
そんな彼女を、未蘭もまた涙を溜めて見下ろしていた。
「……もう、後戻りはできない。生き残りたかったら、最後の質問でも多数派と同じ回答を選ぶしかない。できるものならね」
「できるものならって、どういう意味?」
泣き叫ぶ瑠々花に代わって、呆然と見ているだけだった唯奈が尋ねた。未蘭は憎らし気に睨んでから、冷たく言い放つ。
「そのままの意味。最後の質問は、リアルタイム集計をしているの。その時まで、多数派と少数派が私にもわからないようにね」
「リアルタイム、集計?」
「そう。このデスゲームには、とある観客がいる。最初から今時点まで、あなたたち以外の裏の裏までずっと見てきた人たちがね。その観客の意見、感想を集計して多数派と少数派が決まるってわけ。どう? 公平でしょ?」
薄い笑みを浮かべてから、未蘭はスピーカーのほうを向き、右手を上げた。
すると、ずっと黒い画面ばかりを映していたスクリーンに、文字が浮かび上がる。
『最終問 嘘と隠し事。親友にされて許せないのはどちらか?』
「――さあ、選びなよ。そして、多数決をとろっか?」
最初は、意味が分からなかった。
一学期の終業式が終わって、家に帰ったら、お姉ちゃんが部屋で手首から血を流して倒れていた。
去年のお姉ちゃんの誕生日に、私がプレゼントしたお洋服を着て、お気に入りだって言ってたブレスレットを身に着けて、そのブレスレットを切り裂くように手首を刺していた。
私はすぐに救急車を呼んで、電話口の人の言う通り止血を試みた。お母さんたちにも電話してたら、救急隊の人が駆けつけてくれて、お姉ちゃんは病院に運ばれていった。
でも、お姉ちゃんは助からなかった。
出血性ショックで、お姉ちゃんは死んだ。
お姉ちゃんの部屋の机の中に、遺書があった。
そこには、お前たちの罪が全て書かれていた。
お姉ちゃんと、そこの凛堂瑠々花さんは親友だったんだよね?
そんな親友と、お姉ちゃんは、同じ人を好きになった。凛堂さんの幼馴染で、お姉ちゃんが通っていた俳優養成学校の同期生、三栖悠真さん。どんくさいお姉ちゃんの練習に粘り強く付き合ってくれたり、落ち込んでいる時には元気づけてくれる素敵な人だったみたい。
でもお姉ちゃんは優しかったし、俳優になりたいっていう夢があったから、恋は諦めた。凛堂さんを応援するって、本気で思ってた。だから、二人を近づけるためにいろいろ裏で動いたり、友達に頼んで二人を鉢合わせたり手助けをしてた。
それなのに、凛堂さんはなかなか勇気が出なくて、悠真さんに気持ちを伝えられなかったんだよね? ああ、それとも、お姉ちゃんが諦めたから安心し切ってたのかな? のんびり恋を楽しめばいいやって。
まあそこはなんでもいいんだけど、困ったことに、悠真さんはお姉ちゃんのことが好きになってたんだよね。
なんか、告白されたんだって。養成学校からの帰り道に。
もちろん、お姉ちゃんは断ったよ? 凛堂さんを裏切るわけには行かないし、俳優になるためには恋に現を抜かすわけにはいかなかったから。
でもね、悠真さんは諦めなかった。
何度も何度も、お姉ちゃんにアプローチをした。さすがのお姉ちゃんも心が揺らいでたみたいだけど、頑なに首を縦には振らなかった。
ただ、やっぱりお姉ちゃんも女子高生なんだよ。
演技が上手くいかなくて、学校の成績も落ちてきて、心が折れて挫折しかけてた時に、そっと寄り添ってくれた悠真さんに寄りかかってしまった。弱っている時にもう何度目かわからない告白をされて、思わず了承してしまった。
お姉ちゃんは、凛堂さんに伝えないと、謝らないとって思ってたけど、なかなか言えなかった。だってお姉ちゃんがした行為は、親友への裏切りだから。
そうして伝えられずにいる間に、凛堂さんは友達からお姉ちゃんと悠真さんが付き合ってることを教えられたんだよね。
そりゃあ、ショックだよね。裏切られて憎らしいし、言ってくれなかったことが悲しいし、とにかく心がぐちゃぐちゃだったんだよね。
だから、凛堂さんは友達の黒瀬さんに相談した。
黒瀬さんはきっと、自分の過去の過ちに重ねたんだよね? 草間王治って人との恋愛にさ。
他人の恋愛を横取りするのは悪いこと。けれど、横取りのような形になってしまった自分がお姉ちゃんに言いに行く勇気はない。だから、気が強くて誰にでも物怖じしない久瀬明梨さんに相談した。
もしかしたら、知らなかったのかもだけど、久瀬明梨さんは自分が嫌いな人に責める口実があると、とことん責めるような性悪なんだよ。取り巻きの宇川ららさんや羽山華奈さんと一緒に、嫌がらせをお姉ちゃんへするようになった。
お姉ちゃんはしばらく耐えていた。物を隠されたり、クラスメイトに無視されたり、俳優としてのアカウントに誹謗中傷がたくさん書き込まれたりした。それでも、お姉ちゃんは必死に耐えた。
でもある日ね、この嫌がらせにはもしかしたら自分の裏切り行為が絡んでいるのかもしれないって、これはずっと言えなかった自分の過ちを謝るチャンスだって思い立ったんだって。
なんとなく疎遠になっていた凛堂さんに、お姉ちゃんが相談しに行ったことがなかった? あったよね?
でも凛堂さんは、知らないふりをした。わかっていながら、嘘をついた。
しかもその時に、わざとらしくあなたは、自分とお姉ちゃんはこれからも一番の親友だよって、うそぶいたんだよね?
そんなこと言われたら、言えなくなるよね。
お姉ちゃんは罪悪感と後悔に苛まれながらも、日に日にエスカレートしていく嫌がらせに耐え続けた。
私やお母さん、お父さんにも隠し通してた。普通に養成学校から「ただいま」って帰ってきて、「いただきます」って一緒にご飯を食べて、「おやすみ」って寝る時には手を振って、朝に顔を合わせた時には「おはよう」って笑いかけてくれて、嫌な学校に行くのに弱音ひとつ吐かずに「いってきます」って笑顔を、浮かべてたんだよ……?
家族が知らないんだから、当然恋人である悠真さんにも言ってなかったみたい。
けれど、お姉ちゃんの演技を誰よりも傍で見てきたのは悠真さん。彼の目は、長くは誤魔化せなかった。お姉ちゃんの様子が変なことに気づいて、慰めてくれたんだって。ほんと、優しいよね。
これは私が調べたことだけど、悠真さん、凄いんだよ。なんか、あちこちにいじめの原因をそれとなく聞いて回って、凛堂さんの気持ちのことを突き止めたんだって。
悠真さん、凛堂さんのところに来たんでしょ? いじめの理由とか聞かれて、いじめを止めるように言われたんじゃないの?
まあ、それはどうでもいい。
一番問題なのは、そこであなたが……お前が、いきなり悠真さんにキスをしたことだよ。
最後のわがままだとかなんとか理由をつけて、フッてもらうためだか知らないけど告白までしたんだって?
キモいよ、正直。性悪にも程があるでしょ。
そしてそれを久瀬明梨にこっそり撮影させて、AIを使って悠真さんが告白を受け入れてる偽りの続きまで作らせて、お姉ちゃんに見させたんだって?
最低。
ほんとに最低!
久瀬明梨は、お姉ちゃんに偽動画を見せた後に、いじめの理由を全て話した。そして、どんな気持ちだったのか思い知れと、正義感を振りかざして罵った。
お姉ちゃん、どんな気持ちだったかわかる?
夢も学校も上手くいかないし、いじめのせいで全然寝られてなくて精神を擦り減らして、正常な判断ができなくて悠真さんに裏切られたって思い込んで傷ついて、でも親友を先に裏切って友情をぶち壊したのは自分だってまた責めて、何もかもに絶望したお姉ちゃんの気持ち、お前にわかる? 追い込まれて自殺をしたのに、お前らが自分を責めてほしくないからって転校だと偽ってほしいって書いたお姉ちゃんの気持ちが、わかるかって聞いてんだよ!
……もうね、お姉ちゃんは自分に何も残ってないって思ったんだって。
私がいたのに。
私に言ってくれたら、真実を突き止めたのに。
お姉ちゃんは誰にも相談することなく、お前と一緒に買ったお気に入りのブレスレットとともに命を絶った。
これは、その復讐。
お姉ちゃんを死に追い込んだ人はみんな死ねばいい。
少しでも関係がある人は、みんな同罪だ。
クラスメイトだった人も、同じ部活だった人も、いじめを知っていて見て見ぬふりをした人も、SNSにあれこれ書き込んだ人も、みんなみんな同罪だ!
……もちろん、私だってそう。
お姉ちゃんの傍にいたのに、気付けなかった。
誰だよ、お姉ちゃんを大根役者だなんてバカにしたヤツは。
身内が、わからなかったんだよ?
美来お姉ちゃんは、私の自慢のお姉ちゃんなの。大好きなの。だからこそ、どうしても赦せないの!
復讐のためなら、悪魔に魂だって売ってやる。
だから私は、裏路地で接触してきた怪しい人の言い分に乗った。
デスゲームの企画案を書いて、開催したい理由も書いて、申し込んだ。
そして、通った。
どうだった? 多数派に責められるデスゲームは。
楽しんでくれた?
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未蘭が語っていく真実に、唯奈も瑠々花も言葉を失っていた。
特に瑠々花は顔一面を涙と鼻水で濡らし、嗚咽をあげて慟哭していた。
「泣きたいのはこっちだよ! この人でなし!」
未蘭が感情的に罵る。すると、触発されたように瑠々花が叫んだ。
「違う! あたしだって傷ついてた! 迷ってた! なんとかして久瀬さんのいじめを止めないとって思ってた! でも、怖かった。勇気が出なかった。事が大きくなりすぎてて、どうしたらいいかわからなかった……。だからあたしは、あたしは……っ!」
「だからって、なんでもしていいわけないでしょ! 最後の偽動画なんて、あそこまでやる必要なかったでしょ!」
「違うの! あれは明梨が勝手にしたこと! あんなことしてなんて頼んでない! 唯奈と一緒に文句だって言いに行った! ほんとなのっ!」
「誰が信じるか! お前みたいな嘘つきの言うことなんて!」
「違う! 信じて! あたしは、本当に美来のことを親友だと思ってたの! だから悠真と付き合ったことを隠されて傷ついたし、悲しかったし、やり返したかったの!
……でも、傷つけたいなんて、思ってなかった……。ただあたしの黒くて最悪な気持ちを落ち着けたかっただけなの……。
美来を、死なせてしまうなんて……思ってなかったのーーっ!
あああああああ…………っ!」
瑠々花がその場に泣き崩れた。
何度も美来の名前を呼んでいた。
そんな彼女を、未蘭もまた涙を溜めて見下ろしていた。
「……もう、後戻りはできない。生き残りたかったら、最後の質問でも多数派と同じ回答を選ぶしかない。できるものならね」
「できるものならって、どういう意味?」
泣き叫ぶ瑠々花に代わって、呆然と見ているだけだった唯奈が尋ねた。未蘭は憎らし気に睨んでから、冷たく言い放つ。
「そのままの意味。最後の質問は、リアルタイム集計をしているの。その時まで、多数派と少数派が私にもわからないようにね」
「リアルタイム、集計?」
「そう。このデスゲームには、とある観客がいる。最初から今時点まで、あなたたち以外の裏の裏までずっと見てきた人たちがね。その観客の意見、感想を集計して多数派と少数派が決まるってわけ。どう? 公平でしょ?」
薄い笑みを浮かべてから、未蘭はスピーカーのほうを向き、右手を上げた。
すると、ずっと黒い画面ばかりを映していたスクリーンに、文字が浮かび上がる。
『最終問 嘘と隠し事。親友にされて許せないのはどちらか?』
「――さあ、選びなよ。そして、多数決をとろっか?」



