【調査記録紙片・羽山華奈】
羽山華奈の両親は、彼女の姉である愛華を溺愛していた。才色兼備でコミュニケーション能力も高い羽山愛華は、家でも学校でもどこでも人気者だった。
反対に、羽山華奈は出来損ないだった。勉強もスポーツもからっきし。幼い頃は人見知りが激しく、会話も苦手だった。両親からそれなりの愛情はかけられていたものの、愛華との差は歴然だった。それゆえに、羽山華奈と羽山愛華の姉妹仲は最悪だった。
「出来損ないの妹なんて知りませんよ。どうせまたどこかほっつき歩いてるんじゃないですか」
調査で羽山華奈のことを訊くと、一言目にそんな言葉が返ってきた。身分を偽り、さらに詳しいところまで深堀りすると、いろいろとわかってきたことがある。
両親からの愛情の差のためか、優等生そのものの姉とは異なり、羽山華奈は不良少女として育っていった。いじめや暴力といった人を傷つける行為こそしないものの、両親の言うことにも教師の言うことにも反発し、学校をサボることも日常茶飯事だった。そんな妹のことを、姉である羽山愛華は恥ずかしく感じ、どこまでもきつく当たっていたようだ。
そんな経緯もあり、両親はさらに姉・愛華に愛情を注ぎ、妹・華奈は家庭内でさらに孤立していった。学校にもどこにも自分の居場所がないと思い込んだ羽山華奈は、溜め込んだストレスと孤独感から、当時学校の人気者で、裕福だった子の持ち物を盗んだ。
「私を見て欲しかったとか、訳の分からないことを言ってましたね。今思い出しても意味不明です」
姉・愛華によると、羽山華奈はこれをきっかけにイジメられるようになったようだ。盗みを働き、教師の言うことも聞かない羽山華奈を庇う者はいなかった。ただひたすらに、羽山華奈はイジメを耐えていたらしい。
「あーでも。確か誰かが華奈を庇ってくれたとかで、それをきっかけに華奈へのイジメが止んだってお母さんが言ってました。それなのにあの子、今度はイジメに加担するようになったらしいんです」
よくある話で、どうやら羽山華奈を庇った生徒が今度はイジメのターゲットにされたようだった。羽山華奈もそこに加わり、一緒になって悪口を言ったり、持ち物を盗ったり、時には殴る蹴るの暴力にも手を染めていたらしい。
「聞いてください。しかもね、あの子、イジメをするようになってから急に生き生きとし出したんです。人間失格だと思いません?」
ここから先は、羽山華奈のSNSを遡っていくとヒントがあった。
『イジメたら、イジメられなくなった』
『イジメられるのは、華奈を見てくれるから嫌じゃなかった』
『でも、痛いのは嫌だった』
『消しゴムとか盗まれるのも、靴を隠されるのも嫌だった』
『だから、イジメた』
『そしたら、みんな華奈を殴ったりしなくなった。物も隠されたり盗まれたりしなくなった』
『知らなかったな』
『イジメって、楽しい』
『みんな、華奈と話してくれる。華奈のことを見たままで、華奈と一緒にいてくれる』
『みんなと一緒に悪口を言ったり、一緒に作戦を立てて物を隠したり、なんか安心する』
『なんだか、生きてるって感じがする』
皮肉にも、どうやら羽山華奈はイジメることによって自身が長年求めてきた承認欲求を満たしていたらしい。
イジメの傍観者でありながら、自身を主役として、生きている実感を得ていたようだ。
羽山華奈の両親は、彼女の姉である愛華を溺愛していた。才色兼備でコミュニケーション能力も高い羽山愛華は、家でも学校でもどこでも人気者だった。
反対に、羽山華奈は出来損ないだった。勉強もスポーツもからっきし。幼い頃は人見知りが激しく、会話も苦手だった。両親からそれなりの愛情はかけられていたものの、愛華との差は歴然だった。それゆえに、羽山華奈と羽山愛華の姉妹仲は最悪だった。
「出来損ないの妹なんて知りませんよ。どうせまたどこかほっつき歩いてるんじゃないですか」
調査で羽山華奈のことを訊くと、一言目にそんな言葉が返ってきた。身分を偽り、さらに詳しいところまで深堀りすると、いろいろとわかってきたことがある。
両親からの愛情の差のためか、優等生そのものの姉とは異なり、羽山華奈は不良少女として育っていった。いじめや暴力といった人を傷つける行為こそしないものの、両親の言うことにも教師の言うことにも反発し、学校をサボることも日常茶飯事だった。そんな妹のことを、姉である羽山愛華は恥ずかしく感じ、どこまでもきつく当たっていたようだ。
そんな経緯もあり、両親はさらに姉・愛華に愛情を注ぎ、妹・華奈は家庭内でさらに孤立していった。学校にもどこにも自分の居場所がないと思い込んだ羽山華奈は、溜め込んだストレスと孤独感から、当時学校の人気者で、裕福だった子の持ち物を盗んだ。
「私を見て欲しかったとか、訳の分からないことを言ってましたね。今思い出しても意味不明です」
姉・愛華によると、羽山華奈はこれをきっかけにイジメられるようになったようだ。盗みを働き、教師の言うことも聞かない羽山華奈を庇う者はいなかった。ただひたすらに、羽山華奈はイジメを耐えていたらしい。
「あーでも。確か誰かが華奈を庇ってくれたとかで、それをきっかけに華奈へのイジメが止んだってお母さんが言ってました。それなのにあの子、今度はイジメに加担するようになったらしいんです」
よくある話で、どうやら羽山華奈を庇った生徒が今度はイジメのターゲットにされたようだった。羽山華奈もそこに加わり、一緒になって悪口を言ったり、持ち物を盗ったり、時には殴る蹴るの暴力にも手を染めていたらしい。
「聞いてください。しかもね、あの子、イジメをするようになってから急に生き生きとし出したんです。人間失格だと思いません?」
ここから先は、羽山華奈のSNSを遡っていくとヒントがあった。
『イジメたら、イジメられなくなった』
『イジメられるのは、華奈を見てくれるから嫌じゃなかった』
『でも、痛いのは嫌だった』
『消しゴムとか盗まれるのも、靴を隠されるのも嫌だった』
『だから、イジメた』
『そしたら、みんな華奈を殴ったりしなくなった。物も隠されたり盗まれたりしなくなった』
『知らなかったな』
『イジメって、楽しい』
『みんな、華奈と話してくれる。華奈のことを見たままで、華奈と一緒にいてくれる』
『みんなと一緒に悪口を言ったり、一緒に作戦を立てて物を隠したり、なんか安心する』
『なんだか、生きてるって感じがする』
皮肉にも、どうやら羽山華奈はイジメることによって自身が長年求めてきた承認欲求を満たしていたらしい。
イジメの傍観者でありながら、自身を主役として、生きている実感を得ていたようだ。



