相変わらず外はセミが鳴き続けていて、じりじりと暑さに拍車をかけている。
エアコンがきかへんバックヤードは、息が詰まるほど蒸し暑い。
「おとん、自転車ヤバいことなっとるで」
「おぉ。今親父に行ってもろた。予想以上に多いな」
「やっぱ俺入ろか?」
事務所の中はほとんど人が出払っていて、奥の通路ではせわしなくスタッフが動き回っている。
「いや、ええわ」
「でも、予想以上に来とるんやろ?」
「まあな。ほんま穂高君は人気者やな。高校生の葬式でこんなよーさん来るの初めてちゃうか」
「……やんな」
まぶたの縁に涙が溜まっていくのが分かる。
「こっちは何とかなるから。会場の入り口にいちくんと直くんもおったで。お前を待っとんちゃうか?はよいったり」
おとんの手が肩に触れる。
「わかった。ありがとう」
急いで会場に向かうと、ちょうど受付が始まっていた。
想像以上の参列者が列をなし、受付の前に長い列を作っている。
中学の同級生に、サッカー部の仲間、高校の先生たち。果ては最寄りのコンビニの店長までおる始末。
穂高が、どれだけたくさんの人に愛されていたのかが、嫌というほど伝わってくる。
ふと扉付近に目をやると、直くんといちが立っていた。二人とも制服姿で、隣にはそれぞれの親もきていた。
俺に気づいた直くんが、小さく手を挙げた。
「おはよ」
近づくと、直くんは心配そうに俺の顔を覗き込む。
「……大丈夫?」
「うん」
小さく息を吐いて、俺は笑ってみせた。
「実はさっき、みんなが来る前にこっそり穂高の顔見てきた」
二人が静かに俺を見る。
「ちゃんとわかっとるよ。……もう死んでもたこと。しんどいけどな」
その一言を聞いた瞬間、いちが唇を噛み俯いた。
「っ……」
直くんの目から涙があふれ、いちも堪えきれず肩を震わせる。
「しーちゃん……」
二人の涙を見て、俺は泣かなかった。喉の奥にせり上がってくるものを、奥歯を噛んで飲み込む。
――泣くなよ、しずる。
さっきの穂高の声が、まだ耳に残っていた。



