外に出た瞬間、朝だっていうのに肌が焼けるような日差しが降ってきた。制服の下、じわっと汗が滲む。
俺は自転車で告別式の会場へ向かった。穂高は、当たり前みたいに俺の後ろに乗ってついてくる。
「自分の告別式に行くって、なんか変な感じやなぁ」
――昨日から存在そのものがおかしいくせに、何を今さら。
「お前、マジで話しかけんなよ」
「うん」
「てか、ついてくんな。家で留守番しとけ」
「いやや」
「なんでやねん」
「だって、ずっとしーちゃんとおりたいし」
「……はぁ?」
さらっと言われて、思わず足が止まりそうになる。
穂高はそんな俺を追い越して、くるりと振り返った。
――後ろ向きのままでも、自転車と同じ速さで進めるんか……
ますます幽霊らしくなくて、俺は頭を抱えた。
「っていうか、多分無理なんよ」
「何が」
「俺、しーちゃんと離れたら、形保てへん」
「……はい?」
また一つ、理解不能な情報が増えた。
「昨日、実験してみたんよな」
「実験?」
「そうそう。しーちゃん風呂入っとる時、ちょっと外まで行ってみてん」
「……お前、何しとんねん」
「そしたら、身体がだんだん透けてきてさ」
――もともと透けとるやん……
穂高は自分の腕を見下ろす。
「意識はあるんやけど、なんか存在が薄なってく感じ?玄関までは原型とどめとったけど、道路でると無理やった」
「それ初耳なんやけど」
「うん。俺も昨日初めて知った!」
けろっとした顔で言う。
「きっと、しーちゃんがパワースポットなんやな!だいたい五メートルくらいが形保てる目安と見た」
「……もう、ほんま意味わからん」
「俺の生命線!」
「もう死んどるやんけ」
「あ、ほんまや」
自分で言って、自分で笑う。本当に暢気だ。
俺は深いため息をついた。
「……お前、ほんま謎すぎ」
「ははは、俺もそう思う」
穂高が風を切り、俺の前を走る。ほんの少し涼しい風が頬を撫でた。



