俺は家に帰るなり、制服のままベッドにダイブした。
――穂高が消えた。また、おらんくなった。
目を閉じても、開いても、穂高の顔が浮かんでくる。
いつもの馬鹿みたいな笑顔やなくて、よーさんの花に包まれた血の気のない青白い顔。
頬に触れた瞬間の、冷たくて無機質な感触が指先によみがえった。
「……っ」
仰向けになって、天井に向かって手のひらをかざす。
あの時、幽霊の穂高を抱きしめようとしたこの手は、何も掴めんかった。
なのに、棺の中の穂高には触れられた。
――なんなん、それ。
目の奥がツキンとする。
「ほ、だか……」
自然と声が漏れた。
――痛い。
胸の奥の、自分でも触れることのできないやわい場所がズキズキする。
「はぁーい。しーちゃんただいま!呼んだ?」
俺は跳び起きて部屋中を見回す。
すると窓の外から、穂高の頭がぬっと浮かび上がってきた。
「……は?」
「え?いや呼ばれた気ぃして」
「おまっ、え、は?」
「え、呼んでない?」
「……ぇ」
目の前におんのは間違いなく穂高で。
なんで、と思う間もなく視界がぶわっと滲んだ。
消えたと思っとったのに、まだ、ここにおる。 俺は涙が止まらんかった。
「泣くなやしーちゃん……」
「だって、おまえ……急に消えるから……」
「せやな。ごめん。俺ももう消えたかと思った。でも、なんか知らんけど……戻ってこれたわ」
穂高はベッドにふわりと降りた。
そして俺の横にちょこんと座る。
「……なんで、消えたん……」
「ん……わからん」
「またそれか」
「いや、ほんまに」
「…………」
「俺、告別式でしーちゃんに抱きつかれたやん?」
「抱きついてへんし。すり抜けたやろ」
「気持ちの話!」
「……知らんわ」
「いやほんでな、なんか……身体が急に軽なって……気づいたら、俺、薄なっとって」
「いや、薄いんは元からやろ」
「はぁ?幽霊いじりや!ひどい!」
「ふざけてないっちゅーねん!」
「「…………」」
こんな状況なのに、気が付くといつもの会話に戻っとる。
しばらく睨み合ってから、俺は大きく息を吐いた。
「……で?薄くなって?いったん消えたんか?」
「うん。前は薄くなったり、なんやいうたら形保てんくなっても意識はちゃんとあったんよな。
でも、今回は意識も一瞬とんだ」
「まじ?」
「まじ。でも、気づいたらしーちゃんの家におった」
「…………もう……なんなんそれ……」
「俺もわからん」
「謎生命体すぎるわ」
「ほんまな。ってことで!」
急に穂高の顔がニヤニヤし始めた。
「幽霊体解明実験やろうや!」



