嘘つき優等生~本音が言えない私を救ってくれたのは、ある秘密を抱えた君でした~

「見て!(けい)、クラゲだよ」
 俺を振り返って、彼女はそう言った。
「……クラゲだな」
「何よ、その感想」
「クラゲだなーっていう感想?」
 水槽の中を見つめる、(ほし) 実柚(みゆず)
 俺の恋人だ。
「もう!……あ、次はあっち見に行こー。……(けい)、早く!」
 俺の大切な人。
 高校の時、本音を言わずにずっと我慢している彼女にイライラしていた。
 ――言いたいことがあるなら言えよ、って。
 俺たちは、球技大会の実行委員になったことで、少しずつ話すようになった。
 ただ、救いたかった。
 彼女のことは、前から知っていたから。
「チンアナゴだ。可愛い!ね、(けい)もそう思うよね?」
「そうだな」
 ……嘘は優しさじゃない、なんて思っていない。
 嘘は優しさになると思っている。
 ……相手を思ってついた嘘は、優しさになると思っている。
 それが、俺の本心だ。
 ――俺は、彼女に言っていないことが一つある。
「……お姉ちゃんとも、来たかったな」
 俺は彼女に、俺を庇ったせいで、お姉さんが亡くなったのだと言った。
 でも、それは違う。
 ――お姉さんが……、詩悠(しはる)さんが庇ったのは、俺じゃない。
 俺の双子の弟・(りつ)だ。
 そして(りつ)は……、あの事故で死んだ。
 でも、そんなことを、彼女には言えない。
詩悠(しはる)さん、今近くにいるんじゃない?」

 ――詩悠(しはる)さんが、無駄死に(・・・・)だったなんて。