嘘つき優等生~本音が言えない私を救ってくれたのは、ある秘密を抱えた君でした~

「……私、ずっと、嘘は優しさだと思ってたんだ」
「嘘は、優しさ……?」
 駅のホームで、私は、誰にも言ったことのない話をした。
「そう。中学の時にね、クラスメイトが、自習なのに遊んでいた時があったんだ。それで、先生が様子を見に来たんだ。『ちゃんと自習してるか?』って、私に聞いてきたの。その子たちは、私に助けを求める視線を送って来てた。それで私、思わず『はい、やってますよ』って言っちゃった。嘘をついたんだよね。そういうこと、他にも何回かあった。校則違反を、『先生に言わないで』って頼まれて、黙ってたこともあった。……クラスメイトに優しくしているだけだ、って、自分を無理やり納得させて」
 (そら)くんは、黙って聞いている。
「でも、それって、優しさじゃないよな、って。私も、共犯者だったな、って思って。……ごめんね?こんな話」
「……別に良いよ」
 (そら)くんの声は、優しかった。
 私は、どうしても、家族のことを話したくなった。
 ……私をお姉ちゃんだと思っている、お母さんのことを。
「……あのね、(そら)くん――」
 私のその話を、(そら)くんは、黙って聞いてくれた。
「……嘘は、優しさじゃねえよ。相手を傷つけるものだから。……それに、自分も傷つける」
 線路を見つめながら、(そら)くんはそう言う。
「でも、相手を思ってついた嘘は、優しさになることも、あるんじゃねえの?」
「そうだね」
 暖かい風が吹く。
 太陽が、彼の横顔を照らす。
(そら)くん……。あのね……」
「ん?」
「……いや、やっぱり、なんでもない」
 彼に想いを伝えるのは、もう少し先になりそうだな。