元カレと同じ名前の街に出張することになりました

「藤木さん、情報ブレインストームの社員さんの経歴とか顔写真とかってどこかで見られますか?」

 私は自席に戻ると、リーダーに尋ねてみた。
 顔がわからなければ、オフィスに行っても神無月さんを探せない。

「ありますよ。社員ディレクトリーは見られます。ただ、業務委託さんの皆さんのはないですけど」
「社員さんだけで大丈夫です」
「今、チャットにURLを貼っておきました」
「ありがとうございます」

 早速、神無月さんを検索してチェックする。

「え……」

 かなりイメージと違った。
 この写真がいつ撮られたものなのかはわからないけど……
 前髪を眉毛のあたりでパッツンと切った黒髪ボブ。
 黒いハーフリムの眼鏡に真っ赤な口紅。
 少しそばかすが見えるのが、魅力的に映る。
 ギャルソンとかを着こなしてそうなイメージの、すごくオシャレな人。
 年齢は若くも見えるし、私よりも上にも見える。
 でも、あの愛想のない話し方に、なんだか納得してしまった。

「神無月さんは、勤続年数長いんですか?」
「いや、彼女は確かUターンされたみたいですね」
「Uターン?」
「そうそう、東京で大学出て就職して、二年前に生まれ育った八戸市に戻ったって聞きました」

 ちょっと、都会以外では浮いてしまいそうなモード感……

「神無月さんは美味しいお店を色々とご存じなので、聞いてみるといいと思いますよ」
「そうなんですね。はい、伺ってみます」

 教えてくれるかな……
 でも、藤木さんから得た情報で攻略の最初の糸口は見つけられた。
 あとは、私がそれをどこまで推し進められるかだ!

🔸🔸🔸

 八戸に延泊することに決めたのはいいけど、移動手段を考える必要があった。
 調べていくうちに、足がないとどこへも行けないことがわかった。
 タクシーか市バスか、レンタカー?
 タクシーは幾らかかるかわからないので、速攻消えた。
 バスは何分おきに走っているのかも不明なため、半分消えかかっている。
 一番、動きやすいのはレンタカーか……
 運転には問題はない。今はカーナビがあればどこへでも行けるし。
 ひとりで、好きな場所に好きな時間に行けるのであれば、レンタカーが一番理にかなっている。
 八食(はっしょく)センターという飲食店やおみやげもの屋などの店舗が70店近く集まっている場所がある。
 まずは、そこを狙う。
 新鮮な海鮮や、回転寿司が食べられそうだ。
 既に、私の口の中では甘いウニがとろけている。
 ちょっと観光もしたいなと考えると、まだまだ調べる必要はあるけど。
 まずはお腹に入れるものを、最優先に考えたい。
 私は仕事で行くということを、とっくのとうに忘れてしまっていた。
 いかに、八戸をひとりで楽しむか、それしか頭には残ってない。

「だって、ひとりなんだもん。しょうがないじゃん!」

 愚痴は言いたくないけど、調べれば調べるほど、誰かと分かち合いたくなって来る。
 だいたい、ひとりだと食べられる量だって決まってしまう。

「いや、私はこれから先、ひとりメシを極めていく! その第一歩にする!」

 一人暮らしのマンションの中で、独り言ちていた。