元カレと同じ名前の街に出張することになりました

 帰りの新幹線は空いていた。
 土曜日だということもあり、サラリーマンは、ほぼ居なかった。
 私は最後の最後に増えてしまった荷物を手に抱えて座っていた。
 東京までの3時間半、お腹が空いたらこのイギリストーストを食べよう。
 私は、八戸くんのLINEを開いた。
 まだ、お互いにブロックはしていない。
 軽く息を吐くと、画面に集中した。

――お久しぶりです。まだブロックされてなかった。私は木曜日から青森県八戸市に出張してました。今、帰りの新幹線の中です。そう、八戸くんと同じ名前の街に来ちゃった。八戸は海が近いから海鮮が美味しくてお寿司を堪能しました。他にも生サバとかせんべい汁とか……

「あー、なんか旅レポみたいになっちゃう!」

 私は文章を組み立て直した。

――堪能しました。ひとりメシは快適だったけどやっぱり美味しさを共有できないのは寂しいね。八戸くんが私の話を聞いてくれなくても大丈夫です。でも、美味しいと共感できる時間がまた作れたらいいな。メシ友として美味しいものを一緒に食べたいです

 言い切っちゃって、いいかな……
 決してよりを戻したいわけじゃない。
 ただ、美味しいものを食べて、美味しかったよと共有したいだけ。
 何度も消しては書き直しを繰り返した。
 
――イギリストーストを大量購入してきたよ! 高カロリーなのはわかっているけど、美味しいものに妥協はできないよね

 一旦送ると画面を閉じた。
 車窓の外は暗くなり始めている。
 東京に戻っているんだな……
 LINEの着信音がした。
 恐る恐る、LINEを開くと八戸くんからの返信があった。

――イギリストースト食べたいな。星ちゃんが好きそうなお店開拓したんだ。美味しいもの食べてお互いに美味しいって言おうよ

 私は、画面に向かって最大限、口角を上げていた。

                                                   終わり