【Web版】無華の花嫁3~秘めた力を狙われた少女は、黒薔薇の殿下に溺愛される~



 絶叫した視界の先。
 直撃したかと思った青白い雷光は、まるですべてを飲み込むように、黒い球体の中へ音もなく吸い込まれていく。

 あんな恐ろしい雷が、もし暁臣様に当たってしまったら。
 無事でいられるはずがない。どうしたらいいのか。
 お二人を——一体、誰が止められるというのか。

「あ、綾乃様っ……!お願いです、東宮殿下をお止めくださいっ!」
「あのような……そんな……わたくしのような力では、到底……っ」

 隣にいた綾乃様は目を見開き、青ざめた顔で小さく首を振るばかり。

「はははっ!いいね、暁臣!真っ向からの力比べといこうか!!」

 狂気を孕んだ東宮殿下の笑い声とともに、二度、三度と天を裂く雷が執拗に暁臣様を襲う。
 すべては黒い球体に吸い込まれている——そう見えるのに。

 私の足は、がたがたと震えが止まらない。
 お二人がどうなれば止まるのか。
 こんな嵐の中で、暁臣様が無事でいられる保証なんてどこにもない。

『華の加護』も『異能』も持たない無力な私には、仕組みがわからない。
 何をすればいいのかもわからない。
 ただ祈ることしかできないのに、その祈りさえ、雷鳴にあっさり掻き消されていく。

 そして、一際大きな雷が吸い込まれた後だった。
 吹き荒れていた風の引き込みが、わずかに——けれど確実に弱まった。

「……小さく、なって……いる……?」

 暁臣様の両腕の幅ほどもあった漆黒の球体が、目に見えて萎縮していく。
『異能』の仕組みなど、私には何もわからない。けれど……。
 あの漆黒の球体が、もし有限の力だったとしたら。
 あの凄まじい雷を、生身の人間が耐えきれるとは到底思えない。

「いい加減、飽きてきたな……そろそろ終わりにしようか、暁臣」