疎まれてきた最強妖狐は、優しすぎる天狗と政略結婚する

「じゃーん。尊明屋さんの、練り切りでーす!」
「わー!おいしそー」
「でしょ?並んで買ったの」
「お金払うよ。何円だった?」
「いいよー、そんなの。私が、花楓(かえで)と食べたかっただけだから」
 『呪われた妖狐』と疎まれてきた私の、たった一人の友人・鬼田(きた) さやか。
 鬼の名家・鬼恩寺(きおんじ)家の筆頭分家である鬼田(きた)家の長女。
「ありがとね、さやか。じゃあ、お言葉に甘えて……」
 さやかとは、本当に小さい頃からの仲だ。
 私の、たった一つの居場所。
「……ねえ、花楓(かえで)。……ちょっと、良いかな?」
「ん?なに?」
「……私、ね……。……結婚、することになったの」
「え……?け、結婚⁉」
 突然の報告に、私は呆然とした。
「お母さまが決めた縁談で……。龍神の将軍に嫁ぐことになって……」
「将軍って……。龍王(りゅうおう) (しん)さま?」
「そう。(しん)さま……。だから、こうやって、頻繁に会うの、ちょっと難しくなる、かも……」
 衝撃だった。
 私にとって、たった一つの居場所の、さやかと、会えなくなるなんて……。
「もちろん、手紙とか、たくさん送るし、会える時には、会おう!……私たち、親友だもんね?」
「うん、……そう、だね」
 さやかがいなくなったら、私、どうやって生きていけば良いの……?

『女のくせに――っ』

 私には、弟がいる。
 ……弟が生まれるまでは、幸せだった。
 強かったから、自然と周囲に人が集まって来て、楽しかった。
 お父さんも、お母さんも、優しかった。
 ……でも、それはきっと、私しか子どもがいなかったから。
 弟が……男の子が生まれた時、私への態度が変わった。
 まるで、別人のようになってしまった。
 弟ばかり愛する両親。
 弟を引き立てるのよ、と言ってくる親戚。
 私から離れていく、佐狐(さこ)家の跡継ぎというだけですり寄って来ていた人。
 女のくせに強いなんて、と言ってくる人。
 ……もう、人なんて信じられなくなった。
 でも、そんな時でも、さやかだけはそばにいてくれた。
 それが、私にとって、どれだけ嬉しかったか。
 きっと、誰にも分からない。
「……ごめんね、花楓(かえで)。こんな、急な報告になって……。私、明日には、この町を出るの。……はい、これ。ぬいぐるみ。それを私だと思ってね。…………じゃあ、またね」
「うん……。またね」
 まだ、あまり状況が飲み込めないまま、さやかは、帰ってしまう。
 私は一人、ただ茫然としていた。