異能を持たない花嫁と最強のあやかし

「……今まで、お世話になりました」
 使用人室には、なんとなく重い空気が流れている。
 そりゃそうだよね。
 今まで、良いように使えてきた私が、いなくなるもんね。
 ……あやかしの花嫁に選ばれて。
 しかも、(すめらぎ)家の次期当主。
 私も信じられない。
「…………じゃあ……」
 その空気に耐えられなくなる。
「なんでこんな人が(すめらぎ)さまの花嫁に選ばれるの?」
「使用人以下だったくせにね」
 後ろから聞こえる声に、反応してはいけない。
 もう慣れた。
 慣れた。
 慣れた……。
「あーあ。せっかくこき使える人だったのになー」
 泣いちゃダメ。
 泣いちゃダメ。
「今まで散々迷惑かけてさ。そのくせに、花嫁に選ばれたから辞める?……ふざけんなよ」
「――消えちゃえば良いのに」
 今まで築き上げてきたものが、壊れていく気がした。
 私なんて、いないほうが良かった。
 生まれてこないほうが良かった。
 みんな、姉上が……柊香(しゅうか)がいれば良いんでしょ?