異能を持たない花嫁と最強のあやかし

「……はあ。私たちの娘が、(すめらぎ)さまに嫁ぐのは、思ってもみない良い話だけど、それが桜子(さくらこ)だなんて……」
(たかむら)家から、無能令嬢を出すということだろう?(うち)の信頼が下がりかねない」
 ……そう、だよね。
 私なんかが……。
「でも、断ったら断ったで、(うち)の評判が下がるでしょ?」
「そうなんだよ!そこが問題で……」
「……じゃあ、どうするのよ⁉」
 居間の隅で、お盆を持って突っ立っている。
「……そうか!無能令嬢だと世間にバレなければいいのだわ」
「バレる気がするが……」
「やってみないと分からないでしょ?断るよりはマシだと思う。バレないかもだし……。……それに、桜子(さくらこ)が嫁いだ時に、縁を切ればいいわ。そうすれば、桜子(さくらこ)は、もう(うち)の人間じゃなくなる」
 縁を、切る……。
「確かにそうだな」
「……でも、(すめらぎ)のほうは分かってるんじゃないの?桜子(さくらこ)が無能だってこと」
 姉上が、居間に入って来る。
「もうそれは仕方ないじゃない。……それに、柊香(しゅうか)だって、もう桜子(さくらこ)と一緒に暮らさなくても良くなるのよ?あなたが望んだことじゃない。引っ越しには、もう少し時間がかかるでしょう?」
「それは……」
 私はやっぱり、姉上に嫌われていたんだ……。
「……分かった。(すめらぎ)さまに返事をしておく。桜子(さくらこ)は、この家を出る準備をしろ」
 冷たい言葉だった。
 冷たい瞳だった。
 居間を出て行く父上を、見ることができない。
「――アンタなんか、向こうで捨てられれば良いのよ」
 姉上も、それに続いて出て行く。
 母上は、居間の片づけをしていた。
「て、手伝います」
「そう。……なら、お願いするわ」
 私に興味なんてないんだろうな。
 ……私は、無能だから。