異能を持たない花嫁と最強のあやかし

「ねえ、桜子(さくらこ)。そのお菓子とって」
「はい……」
 姉上は、私を使用人のように扱う。
 ……私が、無能令嬢だから。
「……あ、そうだ。私、今日、夕食は、(すみれ)と外で食べるから」
「はい……」
 (すみれ)……というのは、姉上の花婿である、(たちばな) (すみれ)さんのことだ。
 姉上より3つ上。
 姉上が中等学校2年の頃に見初められた。
「……あと、髪飾り、新しいの買っておいてくれない?これはもう古いから」
「はい……」
 私に、拒否権などない。
 嫌だと言ってしまえば、もうこの家にはいられなくなってしまう。
「じゃあ、お部屋の掃除よろしくね」
「はい……」
 姉上は、私に水をかけながら、部屋を出て行く。
 いつものことだ。
 気にしない。
 気にしてはいけない。
 姉上には、立派な部屋が与えられている。
 異能持ちで、あやかしの花嫁で……。
 全女性の憧れ。
「……私の部屋とは大違い」
 夏は暑いし、冬はとても寒い。
 母屋の屋上にある小さな小屋。
 ものは全然置けない。
 布団はボロボロだし、置かれている箪笥は壊れている。
 櫛も、鏡もない。
 ……使用人の部屋のほうがマシだ。
「……どうして、こんなに違うの……」
 何度も思った。
 でも、運命は変わらない。
 ……望んでも、意味なんてない。