異能を持たない花嫁と最強のあやかし

「……行ってまいります」
 母上や父上にそう告げて、私は家を出る。
 外には、皇(すめらぎ)家からの迎えの車が来ていた。
 姉上は、見送りには来なかった。
 そんなに私のことが嫌いなのか……。
 と、少し悲しくなると同時に、諦めの感情も出てきた。
 そうだよね。
 私のことなんて……。
「――桜子(さくらこ)っ」
「皇(すめらぎ)さま……」
「桃矢(とうや)で良い。桜子(さくらこ)も、皇(すめらぎ)になるだろう?」
「……桃矢(とうや)、さま」
 なんだか、少しこそばゆい気がした。
 彼は、優しそうに微笑んでいた。
「行こうか」
「はい……」
 車に乗り込む。
 高級そうな車だった。
 もし、ずっと篁(たかむら)家にいたら、一生乗れなかっただろうな……。
「……桜子(さくらこ)。……急に、すまなかったな」
「いえ、そんな……」
 私にはもったいない相手だ。
 だって、皇(すめらぎ)家の次期当主だよ?
 無能の私が嫁いで良い人じゃない……。
「桜子(さくらこ)には、専属の使用人を用意している。なんでも頼め」
「せっ、専属の使用人⁉」
「ああ……。皇(すめらぎ)の分家である京(かなどめ)の令嬢なんだが……」
 鳳(おおとり)家のご令嬢⁉
 私に専属使用人がつくというだけでも、驚きなのに、京(かなどめ)の方なんて……。
「桜子(さくらこ)と歳はあまり変わらないから、最初は、友達のように接したら良い」
 私、友達いたことないんだよな……。
「……それと、同じ屋敷には、鳳(おおとり)家の令嬢である藤佳(とうか)も住んでいる。桜子(さくらこ)とは同い年だし、良い友人になれると思う」
 お、鳳(おおとり)⁉
 鳳(おおとり)って、皇(すめらぎ)家の筆頭分家だよね……?
 そんな人と私が、友人に?
 ……無理無理。
 なれる訳がない。
「まあ、最初は慣れないだろうが、少しずつ慣れていけば良い。何かあったら、何でも言ってくれ」
「……はい」