俺達が学校内人気ナンバーワンカプ!?

うちの高校は、2年生の9月に3泊4日の修学旅行がある。

今日の6限目のロングホームルームで修学旅行の班を決めた。もちろん自由行動(遊園地)の班も旅館の部屋の班も、律、直希、大聖、俺の4人グループになった。

「いやあー、まじ楽しみすぎるー!」
「美味しい物いっぱい食べたいねー」
「あっ!あとさ!枕投げしよーぜ!?」

4人で帰ろうと教室から出ようとした時だった。

「…川添くんっ!」

突然、同じクラスの男子生徒から声をかけられた。1回も喋った事のない男子生徒。名前は確か…。戸村(とむら)くんだっけ?

「…ん?俺…?」
「川添くんっ。ちょっと2人きりで話したいので、今から空き教室に来てくれませんか?」

…戸村くんと2人で?空き教室で?何を話すの…?まあ、いいけど…。

「…うん、いーよ」

違和感を感じながらも承諾した。

「じゃあ俺ら待ってるね」と、律が言ってくれた。

「ありがとう。ごめんね。ちょっとだけ待っててー」
「いーよ」
「行ってらっしゃーい」

3人とバイバイして、俺は戸村くんと近くの空き教室に移動した。空き教室に入ると、戸村くんは扉を閉めた。

「俺と話したい事って何ー?」

俺が問いかけると、戸村くんはモジモジしながら口を開いた。

「…あのっ。僕の名前ってちゃんと知っててくれてますか…?」
「え?う、うん…。戸村くん…でしょ?」
「あっ、はいっ!そうです戸村ですっ!はあっ、嬉しいなあ、ふふふ」

戸村くんは嬉しそうに笑いながら、黒縁眼鏡をカチャッと直した。

「僕みたいな影が薄い奴の事もちゃんと認知してくれてるなんて、さすが夢人くんだ…!」

なぜか急に下の名前で呼ばれた。

「う、うん…。え、話ってなんなの?」

戸村くんはゆっくりと俺に近付いてきた。

「僕はね、女の子も男の子も、とにかく可愛いお顔の子が大好きなんですよ…」
「…ほ、ほう…」

なんだか怖くて、俺は後退りした。
でも彼は、ゆっくりと迫ってくる…。

「ずっと夢人くんの事、可愛いと思ってて…。毎日夢人くんでいろんな事を妄想して…。でも僕と夢人くんは住む世界が違う。夢人くんはキラキラ一軍グループで、僕は影の薄い隠キャ…」
「…何言ってんの…?」
「でもずっと夢人くんが欲しかったんだ…。はあっ。やっと2人きりになれた…。勇気を出して話しかけて良かった…!」

ずっと後退りしてたけど、ついに壁に追い込まれた。
彼は俺の両肩を力強く掴んできて、こう言った。

「僕のモノになってください」

怖くて、気持ち悪くて、鳥肌が立った。

「…さすがに無理です ごめんなさい…!」

俺は両手で戸村くんを押し退け、逃げようとした。
しかし、戸村くんが後ろから抱きついてきて、背筋が凍った。

「やだっ!離して!お願いだからやめて!!!」
「じゃあ100万払うから僕のモノになってくれますか?」
「なるわけないでしょ!もう離してよ律達が待ってるんだから!」

いくら抵抗しても敵わなくて。
…誰か助けて…!
そう思った次の瞬間。
勢いよく扉が開いた。


「…大聖…」


そこにいたのは大聖だった。
大聖は、今まで見た事のない険しい表情でこちらに来た。

「何してんだよ夢人から離れろお前!!!」

大聖は大声で怒鳴りながら、俺から戸村くんを剥がしてくれた。

「…チッ…。邪魔が入ったか…」

戸村くんは眼鏡を触りながらボソボソと文句を言い、何度も舌打ちをした。
大聖は戸村くんを鋭く睨み付けた。

「…あのさあ、もう金輪際、夢人に近付かないでくれる?」
「…は、はあ?あなたにそんな事言う権利なくないですかあ?」
「ある」

俺は大聖にグイッと抱き寄せられた。



「こいつ、俺のだから。付き合ってるから俺達」



…ん?え?えええ???
ツキアッテルカラオレタチ…???
大聖と俺…付き合ってないよね…?掲示板で人気ナンバーワンカプにはなったけど、付き合ってはないよ…?
…まあ、戸村くんを諦めさせるために嘘ついてくれたんだよね…?

「…チッ…。結局は顔の良いイケメンが勝つのかよ。気持ち悪い世の中だな。ちょっと顔がいいからって調子乗んなよ!」

そう捨て台詞を吐いて、戸村くんはそそくさと逃げていった。

大聖は「ちょっとじゃなくて めちゃくちゃ顔が良くて ごめんねー!?」と叫んでいた。

「…大聖…。ありがとう…。まじで助かった…。ほんと怖かった…」

すると大聖は俺の方を向き、今度はぎゅっと俺を抱きしめた。

「…馬鹿…。気を付けろよ…」
「うん…。ごめん…」
「何か変な事された?」
「…後ろから抱き付かれたけど、まあギリギリ大丈夫…」

大聖が俺を抱きしめる力が更に強くなった。

「…お前に何かあったらどうしようかと思った…」

大聖の声が少し震えているような気がした。よほど心配してくれているのだろうか?それだけでなんだか嬉しかった。

「…へへへ。もう大丈夫だよ。それよりさ、律と直希が待ってるから早く行こ?」
「…そうだな」

大聖は俺から体を離すと、今度は頭を撫でてくれた。

「お前は可愛いんだから、これからは気を付けるように」
「…可愛くないけど、まあ気を付ける…」

俺がそう返すと、大聖は「無自覚だなー」と言ってニカッと笑った。

「行こ?」
「おう!」
「あ!あと、俺が戸村くんに襲われかけた事、2人には内緒で!心配かけたくないから」
「…わかった。夢人がそう言うなら…」

前に後輩の女子生徒に「10万払うからデートして」って言い寄られた時も助けてくれたし、今回も助けてくれた。
大聖は俺のスーパーヒーローだと思った。