(大聖side)
コミュニケーション能力が高くて、人見知りとかもなくて、誰とでもすぐ仲良くなれる。そして自分で言うのもアレだけど、イケメン。
モテない訳がなかった。
だから中学時代は、告白されたら好きじゃなくても付き合って、めんどくさくなったら別れて、また別の子と付き合って、たまに浮気もして、別れて、その繰り返しだった。
高校に入って最初の頃も、一応 他校に彼女はいた。
でも、すぐに別れた。
なぜかというと…。
・・・
1年生のある日の放課後、律と一緒に昇降口に向かった。
「てかさー、今日、律とファミレス行く約束してたじゃん?」
「うん」
「なんかさ、今スマホ見たら、彼女から『会いたい』って連絡来ててさー」
「え、行ってあげなよー」
「えー?正直ダルいんだよねー。律との約束の方が先だったし、ぶっちゃけ律と一緒にいる方が楽しいしさー!」
彼女の事は最初から好きじゃなかったし、なんならもう めんどくさいと思っていた。
どうやって断ろうか考えながら、靴に履き替えていた時…。
昇降口の隅っこで、有線イヤホンで音楽を聴いている男子生徒が目に入った。
それが夢人だった。
びっくりするほど顔が小さくて、でも目は大きくて、ぷっくりとした唇。細くて華奢な身体。女の子みたいだなと思った。
有線イヤホンで音楽を聴いている姿が、なんだか儚くて、綺麗で…。
「夢人!ごめんお待たせー!」
「あ、直希。いいよー」
その時の夢人の ふにゃっと笑った顔が、今まで見た人類の中で1番可愛くて、抱きしめたくなった。
俺は少しだけ、夢人と直希の会話を盗み聞きした。
「そういえば夢人、昼休みの呼び出しは結局なんだったの?」
「あー…。告白…」
「ほーん。モテますなあ…」
「でも、もちろん断ったよ?好きでもない人とは付き合えない。相手にも失礼だし」
夢人と直希はそのまま帰っていった。
さっきの夢人の言葉を頭の中でリピートした。
『好きでもない人とは付き合えない』
『相手にも失礼』
その言葉が、その時の俺に深く刺さった。
夢人はとても誠実で純粋で良い子なんだろうなって思ったのと同時に、自分がどれだけ最低なクソ男なのかを感じさせられた。
なんかその時、目が覚めた。夢人のおかげで。好きじゃない子と付き合うのは もうやめようって思えた。
「大聖ー?どしたー?」
「…んえ?あー、ごめんごめん!行こ行こ!」
俺も律と一緒に昇降口を後にした。
そして俺は、そのまま彼女に【ごめん、別れよう】と、メッセージを送り、女の子の連絡先も全てブロックした。
その日から俺は、夢人の事が頭から離れなかった。
あの純粋で可愛らしい笑顔が、ずっと俺の中から消えてくれなかった。
学校でもずっと、無意識のうちに夢人を探していた。
“…あれ?俺、夢人の事、そういう目で見てる…?”
今まで誰かを本気で好きになった事がなかったし、ましてや男を好きになった事もなかったから、あまり認めたくはなかったけど…。
“俺は夢人の事が好き”
ちゃんと自覚したのだった。
でも、クラスが違うし、お互いに部活とかも入ってないから接点がなく、ずっと話しかけられないままだった。
接点がなくても普通に話しかければいいのに、夢人にだけはなんだか緊張して話しかけられなかった。
俺らしくないなって思った。
いつかは絶対話しかけたい。接点が出来たらいける。でも今は接点がないから なかなかいけない。どうしよう。
そんな風にウジウジしている間に時は流れ、2年になり、新しいクラスになった。
また律と同じクラスで、そして、夢人と直希とも同じクラスだった。
奇跡だと思った。
“『同じクラス』という接点が出来た!よし、話しかけよう!”
俺は真っ先に2人に話しかけた。少し緊張した。ほんと俺らしくない。
「ねえねえ!今日の放課後って暇?4人でカラオケ行こうよー!」
いきなり話しかけられて、夢人は「え?」って感じで戸惑っていた。
だけど直希が「え、行くー!夢人も行くっしょ!?」と言ってくれたおかげで、4人でカラオケに行く事が決定した。
それがきっかけで4人で一緒にいるようになり、夢人とも無事仲良くなれた。
最初は普通に接してたけど、だんだん夢人に触れたくなってきて、夢人の頭を撫でたり、スキンシップが増えていった。
けれど、夢人が俺の事をそういう目で見てない事は わかってた。
それでも俺の夢人への気持ちは変わらなかった。
・
夢人が後輩の女子に言い寄られて困っているのを助けたり、戸村に襲われそうになっていたのを助けたりした。好きな人を守るのは当たり前の事だから。
戸村があまりにもしつこかったから、見せつけるように俺は夢人にキスをした。
それは戸村を諦めさせるためっていうのもあるけど…。俺自身が、夢人とキスしたかったから…っていうのもある。キモいよね。
それで戸村は諦めてくれたみたいだから良かったけど。
・
修学旅行の夜、気持ちが抑えられなくなって、俺は夢人に告白してしまった。
でも、次の日の遊園地で「気にしなくていい」「忘れて」と言った。
と思ったら、文化祭で披露するダンスの練習中にまた告白して…。
俺は夢人を困らせて、振り回してばかりで最低だ。
文化祭が終わった後に、また夢人にキスしてしまった。
そしたら突き飛ばされて「ごめん」と言われた。
“拒絶された”
“やっぱり夢人は俺をそういう目では見れないんだ”
“男同士だし、やっぱ無理だよな”
そう思い、俺は夢人を諦める事にした。
夢人の誕生日祝いもドタキャンした。「用事が出来た」なんて嘘。本当に最低だなと つくづく思う。
拒絶された事が苦しくて。胸が痛くて。
あー、これが失恋の痛みかーって思ったり。
中学時代は俺がたくさんの女の子を傷付けてきて、失恋の痛みなんて知らなかったけど、やっと今、失恋の痛みが わかった。
・
夢人の誕生日祝いをドタキャンして、1人で適当にショッピングモールをぶらぶらしていた。
周りの女子高生達にチラチラ見られて、いつもなら気にしないけど、その日はそれが鬱陶しく感じて、逃げるように男子トイレに行った。
男子トイレに行くと、俺と同じ制服を着た男子が1人でいて、鏡で前髪を何度も直していた。
「あっ」
その男子が水色のコームを落としてしまったから、俺が拾って渡した。
「…あ…。ありがとうございます…。てもはなの人ですよね…?」
「そー!てもはなの人ー!てもはなの赤色担当の大聖だよー!」
「ふふふ。知ってます」
「知っててくれてるんだ!嬉しい!君は?」
「泉斗っていいます。クラスは2年4組です」
「泉斗ね!てか、タメでいいよ?同い年だし!」
持ち前のコミュ力で、泉斗ともすぐ仲良くなった。
「『いず』って呼んでほしい」と言われたので、泉斗の事は『いず』と呼ぶ事にした。
「てか、今日って夢人くんの誕生日だよね?なんで大聖くんはこんな所に1人でいるの?」
「…んー…。まあ、いろいろあるんだよ、俺らにも」
「ふーん?そっかあ」
「そそ」
「…僕ね、自分の顔がコンプレックスで…。最近、目を二重にして、眼鏡からコンタクトに変えてさ。『可愛くなったね』って言ってもらえる事が増えたんだけど…」
「けど?」
「…やっぱりまだまだ自分の顔が嫌いで、気に入らないの…。何回も鏡見ちゃうし…」
いずの悩みを相槌を打ちながら聞いた。
「えー?充分 可愛いと思うけどなー?」
「…いや、でも、やっぱり気に入らなくて…」
「いずが自分の顔を気に入らなかっとしても、俺はいずの顔好きだし、可愛いと思ってるよ!」
俺が励ますと、いずの顔は ぱあっと明るくなった。
「…ありがとう…」
「おう!」
この日をきっかけに、放課後はいずとどこかに行く事が増えた。
俺と会う度にいずは「今日の僕、変じゃない?」って心配そうに確認してくる。
その度に俺は「変じゃない。可愛いよ」って返してる。
・
夢人とは、学校ではちゃんと話すけど なんだか気まずいままだ。
夢人に拒絶されて、俺は夢人の事を諦めた。
諦めた…のに…。
やっぱり夢人の事が好きな気持ちは消えなくて…。
ずっと胸が痛いまま…。
こんなの初めてで、もう、どうすればいいか わからない…。
コミュニケーション能力が高くて、人見知りとかもなくて、誰とでもすぐ仲良くなれる。そして自分で言うのもアレだけど、イケメン。
モテない訳がなかった。
だから中学時代は、告白されたら好きじゃなくても付き合って、めんどくさくなったら別れて、また別の子と付き合って、たまに浮気もして、別れて、その繰り返しだった。
高校に入って最初の頃も、一応 他校に彼女はいた。
でも、すぐに別れた。
なぜかというと…。
・・・
1年生のある日の放課後、律と一緒に昇降口に向かった。
「てかさー、今日、律とファミレス行く約束してたじゃん?」
「うん」
「なんかさ、今スマホ見たら、彼女から『会いたい』って連絡来ててさー」
「え、行ってあげなよー」
「えー?正直ダルいんだよねー。律との約束の方が先だったし、ぶっちゃけ律と一緒にいる方が楽しいしさー!」
彼女の事は最初から好きじゃなかったし、なんならもう めんどくさいと思っていた。
どうやって断ろうか考えながら、靴に履き替えていた時…。
昇降口の隅っこで、有線イヤホンで音楽を聴いている男子生徒が目に入った。
それが夢人だった。
びっくりするほど顔が小さくて、でも目は大きくて、ぷっくりとした唇。細くて華奢な身体。女の子みたいだなと思った。
有線イヤホンで音楽を聴いている姿が、なんだか儚くて、綺麗で…。
「夢人!ごめんお待たせー!」
「あ、直希。いいよー」
その時の夢人の ふにゃっと笑った顔が、今まで見た人類の中で1番可愛くて、抱きしめたくなった。
俺は少しだけ、夢人と直希の会話を盗み聞きした。
「そういえば夢人、昼休みの呼び出しは結局なんだったの?」
「あー…。告白…」
「ほーん。モテますなあ…」
「でも、もちろん断ったよ?好きでもない人とは付き合えない。相手にも失礼だし」
夢人と直希はそのまま帰っていった。
さっきの夢人の言葉を頭の中でリピートした。
『好きでもない人とは付き合えない』
『相手にも失礼』
その言葉が、その時の俺に深く刺さった。
夢人はとても誠実で純粋で良い子なんだろうなって思ったのと同時に、自分がどれだけ最低なクソ男なのかを感じさせられた。
なんかその時、目が覚めた。夢人のおかげで。好きじゃない子と付き合うのは もうやめようって思えた。
「大聖ー?どしたー?」
「…んえ?あー、ごめんごめん!行こ行こ!」
俺も律と一緒に昇降口を後にした。
そして俺は、そのまま彼女に【ごめん、別れよう】と、メッセージを送り、女の子の連絡先も全てブロックした。
その日から俺は、夢人の事が頭から離れなかった。
あの純粋で可愛らしい笑顔が、ずっと俺の中から消えてくれなかった。
学校でもずっと、無意識のうちに夢人を探していた。
“…あれ?俺、夢人の事、そういう目で見てる…?”
今まで誰かを本気で好きになった事がなかったし、ましてや男を好きになった事もなかったから、あまり認めたくはなかったけど…。
“俺は夢人の事が好き”
ちゃんと自覚したのだった。
でも、クラスが違うし、お互いに部活とかも入ってないから接点がなく、ずっと話しかけられないままだった。
接点がなくても普通に話しかければいいのに、夢人にだけはなんだか緊張して話しかけられなかった。
俺らしくないなって思った。
いつかは絶対話しかけたい。接点が出来たらいける。でも今は接点がないから なかなかいけない。どうしよう。
そんな風にウジウジしている間に時は流れ、2年になり、新しいクラスになった。
また律と同じクラスで、そして、夢人と直希とも同じクラスだった。
奇跡だと思った。
“『同じクラス』という接点が出来た!よし、話しかけよう!”
俺は真っ先に2人に話しかけた。少し緊張した。ほんと俺らしくない。
「ねえねえ!今日の放課後って暇?4人でカラオケ行こうよー!」
いきなり話しかけられて、夢人は「え?」って感じで戸惑っていた。
だけど直希が「え、行くー!夢人も行くっしょ!?」と言ってくれたおかげで、4人でカラオケに行く事が決定した。
それがきっかけで4人で一緒にいるようになり、夢人とも無事仲良くなれた。
最初は普通に接してたけど、だんだん夢人に触れたくなってきて、夢人の頭を撫でたり、スキンシップが増えていった。
けれど、夢人が俺の事をそういう目で見てない事は わかってた。
それでも俺の夢人への気持ちは変わらなかった。
・
夢人が後輩の女子に言い寄られて困っているのを助けたり、戸村に襲われそうになっていたのを助けたりした。好きな人を守るのは当たり前の事だから。
戸村があまりにもしつこかったから、見せつけるように俺は夢人にキスをした。
それは戸村を諦めさせるためっていうのもあるけど…。俺自身が、夢人とキスしたかったから…っていうのもある。キモいよね。
それで戸村は諦めてくれたみたいだから良かったけど。
・
修学旅行の夜、気持ちが抑えられなくなって、俺は夢人に告白してしまった。
でも、次の日の遊園地で「気にしなくていい」「忘れて」と言った。
と思ったら、文化祭で披露するダンスの練習中にまた告白して…。
俺は夢人を困らせて、振り回してばかりで最低だ。
文化祭が終わった後に、また夢人にキスしてしまった。
そしたら突き飛ばされて「ごめん」と言われた。
“拒絶された”
“やっぱり夢人は俺をそういう目では見れないんだ”
“男同士だし、やっぱ無理だよな”
そう思い、俺は夢人を諦める事にした。
夢人の誕生日祝いもドタキャンした。「用事が出来た」なんて嘘。本当に最低だなと つくづく思う。
拒絶された事が苦しくて。胸が痛くて。
あー、これが失恋の痛みかーって思ったり。
中学時代は俺がたくさんの女の子を傷付けてきて、失恋の痛みなんて知らなかったけど、やっと今、失恋の痛みが わかった。
・
夢人の誕生日祝いをドタキャンして、1人で適当にショッピングモールをぶらぶらしていた。
周りの女子高生達にチラチラ見られて、いつもなら気にしないけど、その日はそれが鬱陶しく感じて、逃げるように男子トイレに行った。
男子トイレに行くと、俺と同じ制服を着た男子が1人でいて、鏡で前髪を何度も直していた。
「あっ」
その男子が水色のコームを落としてしまったから、俺が拾って渡した。
「…あ…。ありがとうございます…。てもはなの人ですよね…?」
「そー!てもはなの人ー!てもはなの赤色担当の大聖だよー!」
「ふふふ。知ってます」
「知っててくれてるんだ!嬉しい!君は?」
「泉斗っていいます。クラスは2年4組です」
「泉斗ね!てか、タメでいいよ?同い年だし!」
持ち前のコミュ力で、泉斗ともすぐ仲良くなった。
「『いず』って呼んでほしい」と言われたので、泉斗の事は『いず』と呼ぶ事にした。
「てか、今日って夢人くんの誕生日だよね?なんで大聖くんはこんな所に1人でいるの?」
「…んー…。まあ、いろいろあるんだよ、俺らにも」
「ふーん?そっかあ」
「そそ」
「…僕ね、自分の顔がコンプレックスで…。最近、目を二重にして、眼鏡からコンタクトに変えてさ。『可愛くなったね』って言ってもらえる事が増えたんだけど…」
「けど?」
「…やっぱりまだまだ自分の顔が嫌いで、気に入らないの…。何回も鏡見ちゃうし…」
いずの悩みを相槌を打ちながら聞いた。
「えー?充分 可愛いと思うけどなー?」
「…いや、でも、やっぱり気に入らなくて…」
「いずが自分の顔を気に入らなかっとしても、俺はいずの顔好きだし、可愛いと思ってるよ!」
俺が励ますと、いずの顔は ぱあっと明るくなった。
「…ありがとう…」
「おう!」
この日をきっかけに、放課後はいずとどこかに行く事が増えた。
俺と会う度にいずは「今日の僕、変じゃない?」って心配そうに確認してくる。
その度に俺は「変じゃない。可愛いよ」って返してる。
・
夢人とは、学校ではちゃんと話すけど なんだか気まずいままだ。
夢人に拒絶されて、俺は夢人の事を諦めた。
諦めた…のに…。
やっぱり夢人の事が好きな気持ちは消えなくて…。
ずっと胸が痛いまま…。
こんなの初めてで、もう、どうすればいいか わからない…。
