「ちーくん!また来ちゃった!」
ある日の放課後。俺はいつものようにバイト先で働いていると。先輩が堂々とカフェの中に入ってきた。
制服のままで。
「……いらっしゃいませ」
ニコニコと懐っこい笑顔を向けながらじっと俺のバイト姿を見ていた。その視線がなんだか無性にくすぐったい。
普段からこんなに見られることはないから余計に。
「今日は怒らないんだ。ちゃんとメッセージも返してくれるし、俺は嬉しい!」
「こちらの席へどうぞ。メニューお決まりになりましたらお呼びください」
興奮する先輩になるべく構わないように接客した。
あれからなんだかんだ先輩との関わりは途切れていなかった。メッセージが来たら返すし、学校で会えばそれなりに話をする。
ふつーに知り合い感覚で先輩とは接していた。
「んもー!相変わらず冷たい!」
淡々と仕事をこなす俺を見て先輩はぷくっと頬を膨らます。
げっ。男でもこんなことするやついるんだ。気持ち悪!
そんなことを一瞬にして思ったけど心のどこかで少し可愛いと思っていた……自分がいたのが嫌になる。
「今仕事中ですので」
そう言ってさっさと奥のキッチンの方に戻った。
「白河くん、あの人最近よく来るよね」
「そうですか?」
キッチンで出来上がった料理を持っていこうとした時、バイト先の先輩からそう言われた。
俺が客と話すのが珍しいから、みんなして先輩のことを覚えているのだろう。それに俺と学校の制服が同じだから記憶に残るのだろう。
「うん。白河くんに対してだけ、あの人は態度違うね。俺らは普通にお店の人として扱われてるから」
ニヤニヤと先輩は俺にそう話した。一体何を考えているのだろう。俺とあの人はただの知り合い。……友達以下の先輩後輩だ。
「別にそこまでの仲じゃないですよ」
若干イラッとしてしまい、素っ気なく返してしまった。だけど同時に少し胸の奥がほっこり暖かくなるような感じがした。
……俺にだけ態度が違う、か。
「お待たせしました。ご注文のケーキと飲み物です」
俺は仕事をしながらもつい先輩をチラチラと見てしまった。前までは不快な思いしかしなかったのに、あの日の夜の出来事以降なんだか気になって仕方ない。
「お疲れ様でしたー」
それから何事もなくバイトが終わった。いつもの時間に終わり、制服に着替えて帰路に着く。
「ちーくん。お疲れ様」



