「……なんだ。番号しかねぇじゃん。名前とか知ってんの?」
「知ってる。ちなみに女子じゃねぇから。お前が考えてるような関係の人じゃないのは言っとくぞ」
奪ったメモ用紙を見ながら明らかに朝霧は落胆していた。名前とか乗っていると思っていたのだろう。
だけど実際は先輩の男らしい字でIDの数字しか書かれていなかった。
「わかったわかった。……連絡しないの?」
俺のあまりの迫力に負けたのか朝霧はため息を着きながら前の席の椅子にドカッと座る。
久しぶりこんな真正面から話したな。
朝霧とゆっくり話すのはいつぶりだ?
「……迷ってる。男の先輩だから」
「ふーん。別によくね?気軽に友達なっちまえよ。お前は本当に人と関わりたがらないから、いい機会なんじゃない?」
朝霧の言葉にはっと顔をあげる。たしかに俺は人とは関わらないで避けるタイプ。
育った環境とか俺の性格もあるのだろうけど気づいたらいつも1人。
「まぁ、少しは構ってやるか。生意気な先輩だしな」
「先輩にそんな口聞いて大丈夫かよ。名前くらい教えてくれねぇの?」
ケラケラと笑いながら聞いてくる。今なら先輩と話してもいいかも。そんなことを考えていた。
「……夜神朔玖って人。とりあえず追加するか」
「……やがみ、さく……?」
ほとんど無意識に名前を言ってしまった。チャイムが鳴り響く中、俺はスマホに先輩の連絡先を追加する。
でも朝霧は固まっていた。
俺のことをまるで心配するような目で見ていた。
「なんだよ。先輩のこと知ってんのか?」
「知ってるも何も、お前……昔その先輩と……」
朝霧がなにか言おうとした瞬間、ガラッと教室のドアが開いた。いつの間にかチャイムが鳴り終わってホームルームが始まる時間らしい。
担任が教室に入ってきた。
「わり、なんでもない」
「なんだよ。最後まで言えよ」
それを合図に朝霧は口ごもると前を向いた。いつも真面目に参加しない朝霧が何かを誤魔化そうと担任の話しに耳を傾けている。
……一体なんなんだ?
モヤモヤしたまま1日が始まった。
朝霧が口にしようとしたことを知るのはもう少し後になってからだ。
まさか、俺があの先輩と……。
ーピコン!
『追加してくれてありがと!これからよろしくね!』
ぼんやりしていたらスマホに早速先輩からメッセージが来た。俺はスマホを隠すことなく堂々とメッセージを見たのだった。



