初対面で会ったはずの知らない先輩に何故かドキドキしたこと。
先輩と話すのが嫌で嫌でしょうがなかったはずなのに気づいたら連絡を毎日取り合っていたこと。
矛盾していた今の自分の気持ちが……やっと繋がったこと。俺は、俺は……先輩がいないとダメなんだ。
「ごめんね。ちーくんが一番辛い時にそばにいてあげられなくて。こんな形で思い出させちゃって、ごめんね」
「そんな……謝らないで、……朔玖」
自然と口から先輩の名前を呼び捨てにできた。本当の俺たちの距離感が戻ってきた証拠なんだと思う。
先輩……いや、朔玖にとって長く辛い思いをさせてしまった。これからは自分の気持ちに正直になって、朔玖を愛していきたい。
「やっと、名前……呼んでくれた。ありがとう、ちーくん」
俺と朔玖は目を合わせてふっと微笑む。距離が一気に近くなり、唇と唇が合わさった。
朔玖の温もりを感じて幸せが胸いっぱいに広がる。
朔玖に“愛”を教えてもらった何よりの瞬間だった。きっと同性愛はこれからも偏見を持たれるだろう。
後ろ指さされたり、気持ち悪がられたりすると思う。これからも大変なことはたくさんあると思うけど。
「朔玖……今度こそ、俺は朔玖と幸せになるよ。長い間待たせてごめんなさい」
「大丈夫。これから俺たちのペースで、愛を育てていこうよ。大丈夫。この先の未来、悪いことだけじゃないよ。俺が絶対ちーくんのことを守るから」
「……朔玖」
朔玖の真剣な瞳。
俺は思わず息を呑む。そして、いつの間にか朔玖にベッドに押し倒されていた。この瞬間は、誰にも邪魔されたくない。
閉ざしていた心に光をくれた朔玖に、俺の全部をあげたい。
「「“愛してる”」」
2人の声が重なった今。
止まっていた時間が、再び動き出したのだった……。
【終わり】



