それから先輩から今までの話を聞いた。
学校では偶然を装って保健室にいた事。これは俺がたまに保健室に入っていたところを見た事あったらしい。
バイト先は俺の友達の朝霧から聞いたらしい。元々俺の紹介で朝霧のことを知っていて、そこから色々情報を聞いていたとの事。
それから……。俺がこの学校を受験したのは朝霧から勧められて来たことを思い出した。それは先輩がいるからとさりげなく誘導していたのだろう。
アイツは、密かに俺たちのことを応援していたと先輩から聞いて胸が暑くなった。
「……じゃあ、なんで俺は先輩のこと忘れてたんですか?別に事故にあったり、病気になったりしてないのに、先輩のことだけ忘れるなんて」
あれだけ最初にあった頃不快感しかなかったのに。今ではいつの間にか“好きな人”に変わっていた。
昔の記憶も断片的だが少しずつ思い出せている。
「それは……君が、“男の人と付き合っている”ということを中学のほとんどの生徒に知られたからだよ。そこからいじめというか……俺が君から離れていた一年間、相当な酷いことをされていたと朝霧くんから聞いている」
どうやら先輩の話を聞くと、当時は思春期なこともあって男の先輩と付き合った俺のことは瞬く間に生徒に広がった。
同性愛なんて気持ち悪い。
そういうふうに散々なことを言われ、いじめを受けていた……らしい。先輩は1個歳上なので中三の頃は学校にいない。
離れていた期間も長かったため、不登校になった俺はストレスや身を守る方法として自分で先輩の記憶を消してしまったらしい。
「……そんな、ことが」
「うん。だから朝霧くんから、ちーくんが俺のことを思い出せないと聞いて涙が止まらなかった。守れなくてごめんねって何度も謝った」
当時中学生の俺はまだグレていなかった。優等生までは行かないがそれなりに人並みの学生だったと思う。
その変な真面目なとこが裏目に出て、自分と先輩のことを記憶から消した。せっかく、幼なじみで長い間秘めていた気持ちが通じたというのに。
俺はたしかに昔から異性恋愛に興味がなかった。だけどそれは愛していた先輩が居たからなんだ。
「……ごめんなさい。俺、先輩のこと何もかも忘れて。当たり散らかして。保健室で会ったあの日……。不快感しかなかったんです。でも気持ちは正直で。ドキドキ……したんです」
もう、ダメだった。伝えたいことが多すぎて止まらない。



