頭の中が混乱してもう何がなんだか分からない。気づいたら先輩みたいに涙を流しながら意地悪なことを聞いていた。
先輩は純粋に俺と過ごしたいと思っていたかもしれないがこんなことをされたら、そうも思えなくなって。
たった数分で俺の目の前の先輩への気持ちは変わってしまった。俺はどうしても先輩のことが気になってしまう。
“ずっと前から”って……先輩、どれだけ俺のことを好きなんですか?
「ち、違う!思いもしない言葉がちーくんから聞こえてきて、気持ち溢れて止まらなくて。気づいたら……キス、してた。ちーくんを愛してるのは本当だよ!」
いつもより真剣な先輩の表情。じっとその表情を見ていると先輩はスマホをポケットから取り出し、ある一枚の写真を見せた。
「これ……去年の、やつ。ほら、他にももっとちーくんとの写真ある。本当は去年から俺たち付き合ってるんだよ」
「……これ……本当に、俺、だ……」
スマホの写真には先輩と幸せそうな表情で映る昔の俺がいた。ツーショットで、それは紛れもなく、先輩と俺。
先輩に抱きしめられ、幸せいっぱいの表情に見ていて自分が恥ずかしくなるほど。俺と先輩は……付き合っていた。
そこまで考えると。
ーーズキッ、ズキッ。
「……うっ」
突然、激しい頭痛に襲われた。めまいもしてその場で立っていられなくなるほど痛くて。
「ちーくん!」
「さく、せん、ぱい……」
その場で意識を手放した。
***
『ちーくん!俺たち、最強の幼なじみで、最高の幸せな恋人だね!』
あれからどのくらい時間がたっただろうか。ふわふわとする意識の中。写真でみた先輩と俺が笑っていた。
どこかで聞いた事のあるようなセリフを先輩が恥ずかしげもなく幸せいっぱいに微笑む。
幼なじみ……。そうか。俺は、先輩と幼なじみだったんだ。でも、なんで俺は大事な幼なじみで恋人でもある先輩を記憶から消していたんだ。
「……んっ……あ、れ……」
「あ、目が覚めた?ちーくん、いきなり倒れるからびっくりした」
徐々に頭の痛みが楽になって目をゆっくりと開ける。すると先輩は俺を見下ろしながら力なく笑った。
何か暖かいものに乗っている……。
「先輩……少し、思い出しました。先輩と俺、幼なじみだったんですね」
身体を起こしながら先輩を見つめる。膝枕してもらっていたらしい俺は、しばらく眠っていたと思う。
「そう、だよ。ごめんね、いきなり混乱させること言って。でも、どうしてもちーくんに思い出して欲しかった」



