"花"を持たない無能令嬢の身代わり結婚

莉彩(りさ)さま。朝食をお持ちいたしました」
 私は、使用人たちから嫌がらせを受けていた。
 (あおい)家では、嫌がらせはあまり受けていなかった。
「お姉さまは"桜"で、お母さまは"百合"で、おばあさまは"桃"だったのに、どうしてあの人は"花"を持っていないのかしら?」
(あおい)家の方に同情いたしますわ」
 どこにも、居場所なんてない。
 食事は、どんどん質素なものに変わっているし、部屋の掃除にも来ないし、私とは、目を合わせてくれない。
 (せん)さまは、ずっとどこかで戦っていて、家には全く帰って来ない。
 ……私は、形だけの妻。
 でも、全く奥向きのことを仕切れていない。
 "花"を持たない私の言葉なんて、誰も聞いてくれない。
「……莉彩(りさ)さま?」
「あ、ああ、そこに置いておいて。ありがとう」
「悩み事でしたら、いつでも聞きますよ?」
 彼女は、優しい。
 でも、そんな彼女のことでさえ、私は信じられない。
「あの人も、お姉さまの身代わりなんでしょう?」
「……まあ、(せん)さまに嫁ぎたい人なんて、いないでしょうし」