"花"を持たない無能令嬢の身代わり結婚

 私の部屋は、(あおい)家にいた時よりも、広い部屋だった。
 元々、お姉さまのために用意していた部屋なんだろうな。
 だって、途中まではお姉さまで縁談は進んでいたのだから。
 ……この部屋は、私のための部屋じゃない。
 そう考えるだけで、なんとなく暗い気持ちになる。
 家から持ってきた花嫁道具は、お世辞にも綺麗とは言えないものが多かった。
 もちろん、新しく買ったんだろうな、というものもある。
 柳瀬家(ここ)に来る時に来ていた、あの紫色の着物が、そうだ。
 鏡や櫛はお姉さまのおさがり。
 でも、まあ、使えるから、良いよね。
 一度書店で読んだ、虐げられている令嬢の物語では、花嫁道具は、とてもボロボロだった。
 それよりも、断然マシだ。
「……あ、蜘蛛の巣」
 あまり、掃除が行き届いていないのかな。
 (あおい)家の屋敷よりも、大きかったし。
 掃除、大変だろうな。
 窓からは、この屋敷の中庭が見える。
 (あおい)家での私の部屋は旧物置倉庫の地下室だった。
 ボロボロで、とても狭いし、暗い。
 滅多に人は来ない。
 古くなったから、新しい物置倉庫を建てて、いらなくなったものだったから。
 物はあまり置かれていなかったけれど、虫がたくさんいた。
 物置倉庫は、二階と地下室で、地下室は、物置として全く使われていなかったみたい。
 掃除もされていなかったし、蜘蛛の巣だらけで、虫もうじゃうじゃいた。
 ……邪魔者の娘を追いやるのに、最適の場所だったんだろう。
「……そんなこと、考えちゃダメだよね」
 すぐにネガティブな考え方になっちゃうのは、私の悪い癖だ。
 ……みんなから、ずっと無能令嬢と呼ばれてきたからかもしれないけれど。