"花"を持たない無能令嬢の身代わり結婚

「……綺麗な着物」
 紫色の着物は、柳瀬(やなせ)家に嫁ぐために用意されたものだった。
「言っておくけど、それは葵家(うち)のためなんだからね。柳瀬(やなせ)に悪く思われたら困るから」
 私たち(あおい)家は、貴族の家で、柳瀬(やなせ)家は、軍人の家だ。
「向こうでも捨てられれば良いのよ」
 お姉さまは、私を露骨に嫌っている。
 自分は"桜"なのに、妹が"花"を持っていないから、学校でも孤立気味だったのだ。
 ……私のせいだ。
 私が、"花"を持っていないから。
 私は、(あおい)家の人たちにずっと迷惑をかけている。
 せめて、何かで役に立ちたい。
 たとえそれが、お姉さまの身代わり結婚でも。