"花"を持たない無能令嬢の身代わり結婚

 ぼんやりとした意識の中、私は目を覚ました。
 ここは、どこ……?
「あ、目覚ました?やっぱりすごい効き目だね。さすが、自殺未遂に使っただけあるなー」
(みお)、さん……」
「気安く名前を呼ばないでくれる?」
「いっ…………」
 ベッドの上から落ちる。
 とても痛かった。
「目障りなのよ、アンタ」
 (みお)さんは、何かにとりつかれたかのように私を蹴る。
「馴れ馴れしくてムカつく。ホントに消えてよ!」
 血がにじんでいる。
 意識が、ぼんやりとしている。
「お兄ちゃんの一番近くにいたのはっ、私だったのにっ!」
 痛い!
 激痛が走って、意識がはっきりとしてくる。
「なん、で、そん、な、に……」
「決まってるでしょ?アンタが嫌いなの」
 そうストレートに言われると、すごく傷ついた。
「お兄ちゃんはさ、使用人たちに虐められてたアンタに同情して優しくしてあげてるだけなの!調子に乗らないでよ!」
「そんなっ、こ、と……な、い……。(せん)、さ、んは……」
「アンタにお兄ちゃんの何が分かるの?私はね、誰よりもお兄ちゃんのそばにいた。……私のお兄ちゃんをとらないでよ」
 違う。
 違う。
 (せん)さんは、そんな人じゃない!
 ……でも、声が上手く出ない。
「お兄ちゃんもさ、どうせ"花"を持ってないアンタのこと、邪魔だと思ってると思うよ?"花"を持たない妻を持つなんてさ、恥でしかないもんね」

『無能令嬢はいらないの』

 助けて、誰か。
 助けて。
 助けて。
「ねえ、戻ってお兄ちゃんと離婚するか、ここで死ぬか。どっちが良い?選ばせてあげる」
「え…………」
「どっちが良い?」
 部屋の隅には、芽以(めい)さんがいた。
 やっぱり、スープに睡眠薬を混ぜたのは、芽以(めい)さん……?
「は・や・く・し・て!私は忙しいの。……何も答えないなら、ここで殺すけど」
「わ、たし、は…………」
 どっちを選べば良いの?