"花"を持たない無能令嬢の身代わり結婚

 "花"が欲しい。
 何度、そう願っただろうか。
 この世界では、5歳の誕生日に、女子は、自分の"花"を持つ。
 お姉さまは"桜"で、お母さまは"百合"。
 二人とも高貴な"花"だった。
 ……でも、私にはない。
 私は、"花"を持つことができなかった。
 5歳までは幸せだった。
 お母さまもお姉さまも、高貴な"花"を持っていたから、私も、良い"花"を持つだろう、って、周囲から期待されていたし、私もそう思っていた。
 5歳の誕生日。
 私は本当にワクワクしていた。
 私は、どんな"花"を持つんだろうって。
 ……まさか、私が"花"を持てないだなんて、思ってもいなかった。
 (あおい)家の令嬢のくせに、と周囲の人からは白い目で見られている。
 両親は、私を遠ざけたがっているし、お姉さまは、私をのけ者にしている。
 仕方がない。
 高貴な花を持つ女性が優遇され、尊ばれるこの世界で、花を持たない女性は、底辺以下なのだから。
 ……(あおい)家の次女として、情けないし、申し訳ない。
莉彩(りさ)さま。朝食をお持ちいたしました」
 私は、この屋敷から出られない。
 "花"を持たない娘なんて、恥でしかないから。
「……いただきます」
 私に渡されるごはんは、全く味がしないし、少ない。
 必要最低限の栄養だけだ。
「どうして、私には"花"がないの……?」
 悔しい。
 苦しい。
 つらい。
 でも、私はどんな思いも、閉じ込めないといけない。
 私が、(あおい)家に迷惑をかけているのに、泣き言なんて言えない……。