八神とクレーンゲームに一喜一憂しているうちに、気付けば15時近くになっていた。
「この後どうする?」
オレはノープランで来たから、八神に聞いてみた。
「先輩、小腹すいてません?
良かったら、俺のオススメの喫茶店でお茶しませんか?」
「いいね、その喫茶店ってどこにあんの?」
「ここから、徒歩10分くらいです。」
八神の案内で入った喫茶店は、地元の人の憩いの場といった雰囲気が漂う、居心地の良さそうな店だった。
窓際の席に座り、メニューを開いたら、八神が
「先輩、ここのオススメは昔ながらのホットケーキです。」
と言って、指差した。
「じゃあ、それと、コーヒーにするよ。」
「りょーかいです。
父さん、ホットケーキふたつと、コーヒーとカフェオレ!」
「え?父さん?」
「すみません、実はここ、俺の両親がやってる店なんです。」
「そうなんだ?八神んちって、こんな近くにあったんだな。」
カウンターにいる優しそうなマスターが、八神の父親で、ニコニコしながら水を運んできてくれた女性が、母親らしい。
「いつも、うちの息子がお世話になってます。
やだ!すごいイケメンさん!
お母様もさぞかし鼻が高いでしょうねぇ。
あ、鼻が高いって、お顔が似てるでしょうねって意味じゃないのよ。
ご自慢の息子さんなんでしょうねってこと!
うふふふ」
「いえ、そんな…ありがとうございます。」
「先輩、すみません!
うちの母さん、話が面白くない上に、すごいおしゃべりで。」
「いいじゃないの。
こんなステキな子と話す機会なんて、滅多にないから、嬉しくなっちゃったのよ。
いつもはもっと静かなのよ。
うふふふ」
…たぶん、八神の言っていることが真実なんだろう。
だけど、陽気で感じの良いお母さんだ。
ひとしきりオレの容姿を褒めまくったあと、
「ゆっくりしていってね。」
と言って、奥の方へ戻って行った。
「あのさ、今更なんだけど、八神ってオレのこと知ってた?」
「もちろんです。先輩は校内一目立ってますから。」
「一応、知ってはくれていたんだ。良かった。」
「逆に、先輩は俺のこと絶対知らなかったと思うんで、二階堂から話を聞いて、驚きました。」
ここで、オレが八神に興味があって、雅玖が気を利かせて…といった経緯を、気持ち悪くならないよう、上手く説明できる自信はなかったから、咄嗟に別の話題に切り替えた。
「そういや、体育祭の時、八神めちゃくちゃ活躍してたよな。
短距離とリレー。足速いんだな。」
焼きたてのホットケーキと、飲み物を運んできたお母さんが、
「この子、昔から逃げ足だけは速かったのよ。
うふふふ」
と教えてくれた。
「幼稚園の送迎バスが見えると、一目散に逃げ出したりして、ホントに大変だったの。
それに、小学生の時は…」
「母さん!その話長くなるから、また今度にして!」
「はいはい、わかりましたよ。うふふふ」
八神は鬱陶しそうにしているが、お母さんから八神の子供の頃の話を聞けるのは、なんだか嬉しい。
運ばれてきたホットケーキは、ふかふかで、バターとメイプルシロップが染み込んでいて、本当に美味かった。
シンプルだからこそまた食べたくなる、素朴で優しい味だった。
あたたかくて居心地がいい空間で、八神と親しく会話を交わしていると、今まで味わったことのない多幸感に包まれた。
それに、今日初めて話したようなオレを、実家に連れてきてくれたことで、一気に距離が縮まったような、特別な感慨を覚えた。
レジで会計しようとしたら、お父さんが
「いいよ、転校しちゃうんだろ?餞別代わり。
寂しくなったら、いつでもまた来いよ。」
と言って、コーヒーの割引券を大量にくれた。
「この後どうする?」
オレはノープランで来たから、八神に聞いてみた。
「先輩、小腹すいてません?
良かったら、俺のオススメの喫茶店でお茶しませんか?」
「いいね、その喫茶店ってどこにあんの?」
「ここから、徒歩10分くらいです。」
八神の案内で入った喫茶店は、地元の人の憩いの場といった雰囲気が漂う、居心地の良さそうな店だった。
窓際の席に座り、メニューを開いたら、八神が
「先輩、ここのオススメは昔ながらのホットケーキです。」
と言って、指差した。
「じゃあ、それと、コーヒーにするよ。」
「りょーかいです。
父さん、ホットケーキふたつと、コーヒーとカフェオレ!」
「え?父さん?」
「すみません、実はここ、俺の両親がやってる店なんです。」
「そうなんだ?八神んちって、こんな近くにあったんだな。」
カウンターにいる優しそうなマスターが、八神の父親で、ニコニコしながら水を運んできてくれた女性が、母親らしい。
「いつも、うちの息子がお世話になってます。
やだ!すごいイケメンさん!
お母様もさぞかし鼻が高いでしょうねぇ。
あ、鼻が高いって、お顔が似てるでしょうねって意味じゃないのよ。
ご自慢の息子さんなんでしょうねってこと!
うふふふ」
「いえ、そんな…ありがとうございます。」
「先輩、すみません!
うちの母さん、話が面白くない上に、すごいおしゃべりで。」
「いいじゃないの。
こんなステキな子と話す機会なんて、滅多にないから、嬉しくなっちゃったのよ。
いつもはもっと静かなのよ。
うふふふ」
…たぶん、八神の言っていることが真実なんだろう。
だけど、陽気で感じの良いお母さんだ。
ひとしきりオレの容姿を褒めまくったあと、
「ゆっくりしていってね。」
と言って、奥の方へ戻って行った。
「あのさ、今更なんだけど、八神ってオレのこと知ってた?」
「もちろんです。先輩は校内一目立ってますから。」
「一応、知ってはくれていたんだ。良かった。」
「逆に、先輩は俺のこと絶対知らなかったと思うんで、二階堂から話を聞いて、驚きました。」
ここで、オレが八神に興味があって、雅玖が気を利かせて…といった経緯を、気持ち悪くならないよう、上手く説明できる自信はなかったから、咄嗟に別の話題に切り替えた。
「そういや、体育祭の時、八神めちゃくちゃ活躍してたよな。
短距離とリレー。足速いんだな。」
焼きたてのホットケーキと、飲み物を運んできたお母さんが、
「この子、昔から逃げ足だけは速かったのよ。
うふふふ」
と教えてくれた。
「幼稚園の送迎バスが見えると、一目散に逃げ出したりして、ホントに大変だったの。
それに、小学生の時は…」
「母さん!その話長くなるから、また今度にして!」
「はいはい、わかりましたよ。うふふふ」
八神は鬱陶しそうにしているが、お母さんから八神の子供の頃の話を聞けるのは、なんだか嬉しい。
運ばれてきたホットケーキは、ふかふかで、バターとメイプルシロップが染み込んでいて、本当に美味かった。
シンプルだからこそまた食べたくなる、素朴で優しい味だった。
あたたかくて居心地がいい空間で、八神と親しく会話を交わしていると、今まで味わったことのない多幸感に包まれた。
それに、今日初めて話したようなオレを、実家に連れてきてくれたことで、一気に距離が縮まったような、特別な感慨を覚えた。
レジで会計しようとしたら、お父さんが
「いいよ、転校しちゃうんだろ?餞別代わり。
寂しくなったら、いつでもまた来いよ。」
と言って、コーヒーの割引券を大量にくれた。
