清掃の時間からはじまる推し活物語

後輩の雅玖から、
「先輩の思い出作りに協力するよう、八神に言っときましたから。」
と言われた時は、正直焦った。

思い出作りって、なんだよ?
卒業前の小学生かよ。

でも、なぜか八神がすんなり了承したと聞いて、ここでオレが断るのは野暮だよなと思い、行くことにした。

逆の立場で考えてみたら、ろくに話したことがない先輩と一日過ごすって、なかなか勇気が要ることだ。
妙な言い方になるが、その勇気に、敬意を払いたい。

雅玖からもらった時間割表のおかげで、八神のことを見かける機会が増えて、仏頂面以外の表情も知ることができた。

だが、性格については相変わらず謎のままだった。
だから、八神がどんなやつなのか、もっと直接的に知りたい、と思った。


待ち合わせ場所で、八神は寒そうに手を擦り合わせながら立っていた。
鼻の頭が赤くなっているのが可愛くて、思わず笑ってしまった。

八神は、思い出作りという主旨に忠実なプランを考えてくれたらしく、まずは馴染みのゲーセンに行くことになった。

そこで、八神が好きなアニメのフィギュアを、二人で協力してGETした。

なかなか手強くて、途中「無理じゃね?」と諦めモードになったから、オレの最後のひと押しで箱が落ちた瞬間は、興奮して、つい抱き合ってしまった。

声を上げて笑う八神を初めて見たが、子供のように無邪気で、あいくるしい。
初見でクールな印象を持った分、ギャップがエグい。

八神が、
「フィギュアのお礼に、先輩の欲しいものを俺が取ります!」
と言ってくれたが、正直、特に欲しいものはなかった。
だから、ふと目に入った猫のキーホルダーを指差した。

その灰色の猫を、八神は200円でうまいことGETして、
「また、謎キャラのキーホルダーが増えましたね。」
と言って、オレの手に乗せてくれた。

よく見たら、スンとした顔つきが八神に似ていて、瞬時に気に入った。

これ、ずっと持ち歩きたいかも。

とりあえず、トートバッグの持ち手につけた。

八神は目を細めながら、
「こいつを見る度に、俺の…いや、この街のことを思い出してください。」
と言って少し笑った。