清掃の時間からはじまる推し活物語

駅から俺たちの高校に向かう途中に、大きなゲーセンがある。

ここは、とにかくクレーンゲームが充実していて、レアなプライズを置いていたりする。

俺は、好きなゲームのグッズ欲しさに、1万円近く課金してしまって以来、危険な場所としてなるべく近付かないようにしていた。

そんなわけで、久しぶりにここに来たのだが、種類豊富なクレーンゲーム機を見ると、やはりワクワクする。

「先輩、どれ狙います?」

「オレは、特に欲しいのはなくて、確実に取れそうなやつしかやらないんだよね。」

「じゃあ、駄菓子とかマスコットとか、別に欲しくないのに、ゲットしちゃうタイプですね。」

「そうそう、ファンシーすぎるキーホルダーとか、謎キャラの謎グッズばっかうちに増えてく。」

「俺は、先輩と逆で、欲しいやつしか狙わないんですけど、そーゆーのって難易度高くて、つい熱くなっちゃうんですよ。」

「そうなんだ。じゃあ、今欲しいのってどれ?」

「んー、あ、これ!このフィギュア!
これの仲間がうちにあるんで、並べて置きたいです!」
大好きなアニメのフィギュアを見つけて、つい興奮してしまった。

「いいね、これ取ろうよ。」

「いやー、でもこれ、かなり厳しそうですよ。
1回斜めにして、アームで少しずつズラして…」
と、戦略を練っている間に、先輩が無言で500円硬貨を入れてしまった。

「いいから、やってみ。」

「ええええぇ、俺、自信ないんで先輩お願いします!」

「なんでだよ、お前が欲しいやつだろ?
じゃあ、二人で交互に動かそうぜ。」

クレーンゲームをやっている間、先輩との距離感バグりまくりで、ドキドキしすぎてボタンを押すタイミングが、何度もズレてしまった。

先輩は近くで見ても、やっぱりキレイな顔をしていて、なんか知らないけどすっごくいい匂いがする。
1学年しか違わないのに、自分のことがとても幼く感じた。

近くても遠い、こういう感覚を持ってしまうのは、やっぱり先輩が特別で、俺とは異なる世界の住人である証拠なのだろう。