清掃の時間からはじまる推し活物語

その日は日直だったから、ゴミ箱を焼却炉に持っていった。

ただそれだけだった。

まさか、その後毎日のように、焼却炉に通うようになるとは…。


焼却炉で、黙々とゴミを焼いているやつがいる。
ネクタイが緑だから1年生か。

そいつにゴミ箱を渡す瞬間、空き缶が混ざっていることに気付いた。

分別してから改めて出直そうとしたが、後輩君が冷静な様子で
「手が汚れるから、俺がやります。」
と言って、引き取ってくれた。

…なんつーか、オレが女子ならキュンとくる場面じゃないか?

あなたの手は汚させませんって、紳士かよ。

妙に感心しつつ、改めて後輩君の横顔を見た。
一見地味なタイプだが、整った顔立ちをしている。

性別関係なく、好みの顔ってある。
まさしくそいつの顔は、オレの好きな造形をしていた。
色白で童顔だが、鼻筋がスッとしているからか、幼稚な感じはしない。
唇はやや厚めで柔らかそうだ。

たったそれだけのことだったが、なぜかそいつのことが気になって、清掃の時間になると日直に声をかけ、率先してゴミ捨てに行くようになった。

いつも無愛想な後輩君に、
「よろしく」
と言ってゴミ箱を渡し、
「ありがとう」
と言って、空になったゴミ箱を受け取る。

向こうは
「どうも」
と呟くだけだから、関係性は何ひとつ進展しない。

ただ、同じクラスらしき生徒が焼却炉に来て、
「八神」
と呼んでいたのを聞いて、名前を知ることができた。

「八神、また焼却炉の担当になったんだな。」

「まあ…、慣れたし、秋になったら芋でも焼いてみようかと。」

「いいね、おれの分も一緒に焼いてよ。」

「持ってきたら、芋でも0点の答案でも、何でも焼いてやるよ。」

同級生とは、わりと軽快に話すんだな。

「オレの分の焼き芋もよろしく。」
と声をかけようかと思ったが、同級生がいなくなった後は、相変わらずの仏頂面で黙々とゴミを焼いていたため、声をかけそびれた。

先輩後輩問わず、懐いてくる人間の相手は得意だが、こんな風にオレに関心を示さないやつには、どう話かけたらいいのかわからない。

だからこそ、余計にこいつに興味津々なのかもしれない。