正反対な僕たちは

夜の十一時半。
お風呂を上がり、髪を乾かした葵はベッドに潜り込んだ。部屋の明かりを消し、静まり返った部屋でスマホの画面をタップする。

LINEには、すでに一通のメッセージが届いていた。

翔太:『おつかれ! 今日の一ノ瀬さん(あ、葵ちゃん)、昼休みに教科書忘れて焦ってたでしょ笑』

葵はベッドの上でゴロンと転がり、クッションに顔をうずめた。

葵:『忘れてません。隣のクラスに借りに行ってただけです。あと、学校でその呼び方は禁止です』
翔太:『メッセージの中くらい良いじゃん!笑 今日すれ違った時、本当可愛かったよ』

直球すぎる言葉に、思わずスマホを叩きつけそうになる。
葵は両手でスマホを包み込み、ゆっくりと文字を打ち込んだ。

葵:『……翔太くんも、部活のユニフォーム姿、似合ってました』

送信ボタンを押した瞬間、画面の向こうで翔太がどういうリアクションをしているかを想像して、恥ずかしさで足をもだえさせる。

数秒後、すぐに返信が来た。

翔太:『待って、破壊力すごすぎてベッドから落ちたんだけどww』
翔太:『ねえ、明日も放課後ちょっとだけ話せる? 内緒で』

画面から漏れる光が、葵の満面の笑みを照らし出す。
昼間の「完璧な優等生」の仮面は、どこにもなかった。

葵:『……少しだけなら、いいですよ』

画面を伏せ、胸の上にスマホを抱きしめる。
誰にも言えない秘密の時間が、葵の日常を信じられないくらいに鮮やかに彩っていく。

この「誰も知らない二人だけの関係」が、次の大きな波ーー文化祭の準備で、激変することになるとも知らずに。