正反対な僕たちは

放課後、葵が日直の仕事を終えて職員室から教室へ戻る廊下でのこと。

向かい側から、部活に向かう途中の翔太が友達数人と笑いながら歩いてきた。

「じゃあな、また明日!」
「おう!部活頑張れよ〜」

友達と別れ、一人になった翔太が葵とすれ違う。
周りに誰もいないことを確認した瞬間、翔太は葵の真横を通り過ぎさまに、声を落として囁いた。

「......今日、髪型ちょっと変えた?めっちゃ似合ってる」

「っ......!」

葵が驚いて振り向いた時には、翔太はすでに振り返ることもなく、ひらひらと手を振って廊下の奥へ歩き去っていた。

ほんの二秒足らずの出来事。
葵はパサッとプリントを抱え直し、赤くなった耳を隠すように俯いた。

(なんなの、もう......!心臓に悪い......)

ただの同級生から「名前で呼び合う関係」になったあの日から、翔太の距離の縮め方はずるいくらいに上手くなっていた。葵の警戒心を軽々と飛び越えて、いつも一番欲しい言葉を投げてくるのだ。