正反対な僕たちは

期末テストの騒ぎも一段落した、平日の昼休み。

「翔太ー!今日購買の焼きそばパン買えたぞ!半分こしようぜ!」
「マジで!?サンキュ、お前最高かよ!」

相変わらずクラスの輪の中心で、楽しそうに男子生徒たちと騒いでいる翔太。
一方、葵はいつものように窓際の自分の席で、お弁当の蓋を静かに開けていた。

周りから見れば、二人はテスト期間が終わって「家庭教師と生徒」の関係を解消した、ただのクラスメイトに戻ったように見える。

(......あ)

ふと、翔太と目が合った。

翔太は友達の背中に隠れるようにして、葵にしか見えない角度で、左手の親指と人差し指で小さく「丸(OK)」を作ってみせた。
ーー『今日のテスト返却、英語も良かったよ』という、朝交わしたメッセージの続きの合図だ。

葵は気づかれないように、ほんの少しだけ口角を上げ、小さく頷く。

(......バカ。バレたらどうするの)

胸の奥がキュッとくすぐったくなる。
クラスの誰も気づいていない。自分と翔太だけが知っている、ほんの数秒間の「秘密の合図」。
冷たい卵焼きを口に運ぶ葵の頬が、ほんのりと赤く染まっていた。