正反対な僕たちは

「おい翔太!マジかよお前!!」

返却された期末テストの答案用紙を握りしめ、翔太の席の周りに男子生徒たちが殺到していた。

「数学82点、英語85点、現代文88点......おいおい全教科80点超えだぞ?!あの『学年最下位の翔太』が!!」
「マジマジ!俺だって自分の目が信じられないもん!」

大騒ぎする友人たちの中心で、翔太は心の底から嬉しそうに笑っていた。
クラス中がその快挙に湧き立ち、先生までもが「日向、やればできるじゃないか!」と感動している。

そんな賑やかな教室の隅で、葵は自分の席に座ったまま静かに息を吐いた。
手元にあるのは、いつも通りの「全教科100点」の答案用紙。けれど今日の葵にとって、自分の満点なんてどうでもよかった。

(......本当によかった)

この3週間、翔太がどれだけ泥臭く努力していたかを葵を知っている。自分が教えた勉強法を素直に実践し、毎日のように復習ノートを見せてきた。葵の胸の奥に、小さく温かい達成感が広がっていく。

「一ノ瀬さん!」

ガタッと椅子を鳴らして、翔太が葵の席へと駆け寄ってきた。手にたくさんの答案用紙を抱えたまま、目をキラキラと輝かせている。

「見て!全部80点超えたよ!赤点回避どころか、俺の人生最高点!」
「......見ればわかります。大騒ぎしすぎです、日向くん」

葵はいつものようにクールに返そうとしたが、翔太のあまりの嬉しそうな顔に、つい口元がゆるみそうになるのを必死で耐えた。

「これ、全部一ノ瀬さんのおかげだから!本当に、本当にありがとう!」

クラスメイトの視線が集まるのも構わず、翔太は葵に向かって深々と頭を下げた。
まっすぐな感謝の言葉。周りの女子たちが「えっ、日向くんって一ノ瀬さんに勉強教えてもらってたの?!」とざわつき始める。

葵は顔が熱くなるのを感じながら、そっぽを向いた。

「......私の教え方が良かったんじゃなくて、日向くんが諦めずに頑張ったからです」
「〜〜っ!一ノ瀬さん、それズルいって!めっちゃ嬉しいんだけど!!!」

頭を上げてくしゃりと破顔する翔太。その笑顔があまりにも眩しくて、葵は胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。