正反対な僕たちは

「......日向くん。これ、何回目ですか?」

図書館の奥、夕日が差し込む二人きりのテーブル。
葵は赤ペンを置き、眉間を寄せて翔太のノートを指さした。

「えーっと......5回目?」
「6回目です。公式の展開、プラスとマイナスが逆。昨日も全く同じ間違いをしましたよね?」
「うぐっ......ごめん、だってこの数字たち、俺のこと嫌いみたいでさぁ」

翔太は情けない声を上げて机に伏した。
葵は冷ややかな視線を送りながら、「はあ」と深く息を吐き出す。

(教えるだけ無駄なんじゃ......)

普通なら投げ出されてもおかしくないレベルの出来なさだ。しかし、翔太はどれだけ葵に冷たく指摘されても、決して嫌な顔をしなかった。

「よしっ、気を取り直してもう一回!一ノ瀬さんの教え方、すごく分かりやすいから、俺絶対できるようになりたいんだよね」

顔を上げた翔太の目は、まっすぐに葵を見つめていた。一切の誤魔化しも、嫌味もない、純粋な言葉。

「......っ」

葵は思わず視線を泳がせた。
これまで周りの人間は、葵の完璧さに引くか、遠巻きに憧れるか、あるいは嫉妬するかだった。こんな風にまっすぐ「教え方が上手い」「期待に応えたい」と言われたことなんて、一度もなかった。

「......じゃあ、もう一度最初から説明します。よく聞いていてください」
「はいっ、一ノ瀬先生!」

少しだけ柔らかくなった葵の声に、翔太は嬉しそうにノートを開き直した。