正反対な僕たちは

「っ......!?」

次の瞬間、ガタッと椅子が鳴る音と一緒に視界がふっと暗くなった。

強引に腕を引き寄せられ、葵は翔太の広い胸の中でどさりと抱きしめられていた。

「しょ、翔太く......ん!?」

前日の屋上での抱擁よりも遥かに強く、逃さないという意思を感じる力強さ。あまりの近さに葵がパニックを起こし、息をのんだその瞬間ーー

「ん......っ!?」

葵の顎にそっと手を掛けられ、引き寄せられるようにして唇が重ねられた。

(え......っ!?)

思考が完全にフリーズする、
触れるだけの、けれどあまりにも熱い、生まれて初めてのキス。

頭の中が真っ白になった。拒否する隙なんて最初から一秒もなかったし、どう対処すればいいのかすら分からない。
熱い体温が直に伝わってくる。心臓がうるさく鳴り響き、膝から崩れ落ちそうになるのを、翔太の腕が腰を抱きしめてしっかりと支えてくれていた。

ゆっくりと唇が離れると、葵は自分の口元を手で覆い、目を丸くして翔太を見つめた。
目の前にいる翔太の顔も、葵に負けないくらい真っ赤で、肩を上下させて息を荒くしている。実は翔太の方も、心臓が爆発しそうなくらいテンパっていたのだ。

「......っ......、ふぁ.......っ!な、なに......っ!?今の......っ!」
「......っ、キス」
「わ、分かってますそんなこと......っ!なんで......私のファーストキス......っ!」
「俺だってファーストキスだし!!」
「え......っ!?」

開き直ったように叫んだ翔太に、葵は絶句した。

「俺だって......めちゃくちゃ緊張したんだからな!でも、葵ちゃんがあまりのも可愛くて、素直になってくれないから......我慢できなかったんだよ!」

翔太は耳まで真っ赤にしながら、葵の逃げ場をなくすように両肩をしっかり掴み、真っ直ぐに葵の瞳を見つめた。

「好きだよ、葵ちゃん。学年最下位の俺だけど......学年1位の葵ちゃんの『一番特別な男』にしてください。俺と付き合って」

「っ......!!」

不意打ちでファーストキスを奪われた衝撃と、直球すぎる告白と、目の前で真っ赤になりながら必死な翔太の姿。
葵のキャパシティは完全に限界を迎えた。必死に被っていた「クールな仮面」は、跡形もなく砕け散った。

「ずるい......っ、ファーストキスまで奪っておいて......ずるいです、翔太くん......っ」

顔が一気に沸騰し、葵は恥ずかしさのあまり翔太の胸にドシッと額を押し当てて顔を完全に隠してしまった。

「ねえ、返事は?ダメ......?」
「ダ、ダメなわけ......ないじゃないですかバカ......っ!」

葵は翔太の制服の裾をぎゅっと握りしめ、消え入りそうな、けれどはっきりとした声でつぶやいた。

「私だって......翔太くんのこと、大好きなんです......。ファーストキス奪ったんだから、責任取ってずっと私だけの『特別』でいてください......」

その言葉を聞いた瞬間、翔太は嬉しそうに破顔し、もう一度を強く強く抱きしめた。

「任せて!一生責任取るから!」
「......もう、抱きしめすぎです。苦しい......」
「嫌だ、絶対離さない!葵ちゃんが責任取れって言ったんだからね!」
「......本当に、調子に乗りすぎです......っ」

文句を言いながらも、葵はそっと翔太の背中に手を回し、照れくさそうにぎゅっと力を込めた、

茜色の光の中で、ふたりの甘くて特別な初恋が静かに始まった。