正反対な僕たちは

「待ってってば」

すれ違いざま、手首をギュッと掴まれた。

「ひゃっ......!?な、何ですか......っ!」

思わず変な声が出てしまい、葵は慌てて口を押さえる。振り返ると、そこにはいつものおちゃらけた雰囲気とは違う、真剣な瞳の翔太が立っていた。

「な、何でしょうか翔太くん。私は早く帰って明日の予習を......」
「葵ちゃんさ、何勝手に一人で終わらせようとしてんの?」
「え......?終わらせるって、何のことですか。だって、もうテストも終わって、委員の仕事も終わって......私たちが放課後に残る『理由』が、もうありませんから......」

必死に感情を押し殺して淡々と論理的に説明しようとする葵。
けれど、翔太はその言葉を真っ向から遮った。

「そんな口実、最初からどうでもいいんだよ」
「え......っ!?」

「俺が葵ちゃんといたいのは、勉強のためでもなく仕事のためでもないの。理由がないと、俺と一緒にいてくれないの?」
「そ、そんなこと......!私だって、理由がなくても......っ!」

思わず本音を漏らしかけて、葵はハッと息をのんで言葉を詰まらせた。
顔が一気に熱くなり、視線があちこちに泳ぎだす。

「......あ、今『理由がなくても』って言いかけたよね?」
「言ってません!幻聴です!あなたの都合の良い解釈です......っ!」
「嘘つくなよ。顔、真っ赤じゃん」
「これは夕日のせいです!教室が暑いだけで......っ!」

必死に言い訳を並べて「クールな仮面」を取り繕おうとする葵。
そんな彼女を愛おしそうに見つめていた翔太は、ふっと低く笑うと、掴んだ手首をぐっと自分の方へ引き寄せた。

「葵ちゃん、まだ気づかないの?」
「な、なにを......っ」

「俺、最初から葵ちゃんの手を離す気なんて、一秒もなかったんだけど」