正反対な僕たちは

「ねえ葵ちゃん、りんご飴買ったよ!二人で半分こしよ?」
「......いりません。甘いものは結構です」
「え〜、一口だけでも!はい、あーん」

翔太がりんご飴を葵に差し出すと、葵は「子供じゃありません」とそっぽを向く。
しかし、その目はちらちらとりんご飴と翔太の顔を行き来していた。

翔太はふと、葵の「モヤモヤ」の理由に気づいてしまった。

(待って......もしかして葵ちゃん、さっき俺が女子と話していたから......?)

いつも完璧で、冷静沈着な「クールな一ノ瀬葵」が。
自分に気づかれないように必死に隠しているつもりで、実は全身で「ヤキモチ」を焼いている。

(やばい......可愛すぎてニヤケが止まらない......!!)

翔太は溢れそうになる笑みを必死で噛み殺し、葵の顔を覗き込んだ。

「そっかぁ。さっき女子と話してたから怒ってるの?」
「っ!別に、誰と連絡先を交換しようと翔太くんの自由です。私には関係ありません」

葵は慌てて早口になり、前髪を直す仕草で動揺を隠そうとする。
「関係ない」と言いながらも、その瞳には明らかに「面白くない」と書いてあった。

「ふふっ、関係大ありだよ」
「......え?」

翔太は楽しそうに笑うと、葵の手からパンフレットを抜き取り、自分のポケットに突っ込んだ。そして、彼女の細い指を隙間なく絡め取るようにーー力強く『恋人繋ぎ』で握りしめた。

「ひゃっ......!?し、翔太くん......!?手......!」

突然の恋人繋ぎに、葵の「クールな仮面」が一瞬で崩壊する。顔を真っ赤にしてパニックになる葵に、翔太は葵の耳元へ顔を寄せ、嬉しそうに囁いた。

「教えなかったよ」
「......え?」
「さっきの女子たちに、LINE聞かれたけど教えなかった。......だって、今は葵ちゃんと二人で楽しみたいからさ」
「っ......!」

ふいに言われた言葉に、葵の「クールな仮面」が一瞬で崩壊する。顔を

「だから、そんな不機嫌にならないで?俺にとって今日の特別は、葵ちゃんだけなんだから」

「ふ、不機嫌なんて.......していま......っ!」

言い返そうとした葵だったが、翔太の真っ直ぐな瞳と、繋がれた手から伝わる熱さに言葉が詰まる。自分の胸のモヤモヤが「嫉妬」だったのだと、翔太に指摘されて初めて自覚してしまった。

「......バカ。......ずるいです」

真っ赤になった葵は、恥ずかしさのあまり翔太の肩にデコをぽんと押し当てて顔を隠してしまった。

「あはは!ごめんごめん。ほら、りんご飴食べよ?」
「......食べる。一口じゃなくて、全部食べます」
「えぇーっ!?俺の分は!?」

小さく意地を張る葵と、嬉しそうに声をあげて笑う翔太。
ふたりと甘くて特別な時間が、文化祭の賑わいの中に溶けていった。