正反対な僕たちは

「一ノ瀬、頼む!このおバカを助けてやってくれ!」

放課後の職員室。担任の威勢の良い声と、力強い頭の下げ方に、葵は思わず一歩後退りした。
担任の隣には、頭をかきながら苦笑いしている翔太が立っている。

「いや〜、先生『おバカ』はひどくない?俺だってこれでも全力を尽くした結果の『学年最下位』なんだからさ」
「胸を張って言うことじゃないだろ!期末テストまであと3週間。お前、次のテストでも赤点だったら留年リーチだからな!」

葵は手元のテスト用紙の束に視線を落とし、心の中で小さな溜息をついた。
学年首位の葵にとって、テストで赤点を取る感覚も、学年最下位の景色も想像がつかない。

「一ノ瀬さん、忙しいのに本当にごめんね。先生がどうしてもって言うから......」

翔太は心底申し訳なさそうに、けれどいつもの人懐っこい笑みを浮かべて葵を見る。

「......放課後の1時間だけなら。ただし、私の勉強時間の邪魔はしないでください」

葵の素っ気ない、冷ややかな返答。普通の男子なら引いてしまうような塩対応だったが、翔太はパッと表情を明るくした。

「本当?!ありがとう、一ノ瀬さん!神様、仏様、一ノ瀬だ〜!」
「......大袈裟です。あと、図書館では静かにしてください」

こうして、学年トップと学年最下位という、決して交わるはずのなかった二人の「放課後勉強会」がスタートした。